イーサリアム財団がL1 zkEVMの1年以内実装を目指す
イーサリアム(Ethereum)財団のプロトコルエンジニアであるソフィア・ゴールド(Sophia Gold)氏が、レイヤー1(イーサリアム)へのゼロ知識証明仮想マシン(zkEVM)実装計画について7月10日にブログを発表した。同計画では、バリデーターが従来のトランザクション再実行ではなく、複数のzk証明を検証することでブロックを検証できるようになる。
実装当初は少数のバリデーターがzkクライアントを実行することが想定されており、時間をかけて本番環境でのセキュリティを実証していく予定とのこと。イーサリアム財団は形式検証、仕様書作成、監査、バグバウンティプログラムへの資金投入を通じて、徐々に採用数が向上していくと予想しているという。
ステークの過半数がzkクライアントを実行するようになった段階で、ガスリミットを引き上げ、適切なハードウェアを実行するバリデーターが証明検証を行うことを必須とするとのこと。これによりすべてのバリデーターが実行証明を検証するようになれば、同じ証明をネイティブzkロールアップ用の技術である「EXECUTEプリコンパイル」でも使用可能になるという。
リアルタイムプルービング(リアルタイムで暗号学的証明を生成・検証する)は、zkVMチームが目指すべき標準化された定義として提案されている。なおリアルタイムとは、現在のスロット時間12秒とネットワークデータ伝播時間約1.5秒を考慮し、「10秒以下」と定義される。zkVMはメインネットブロックの99%をこの時間内で証明できることが期待されている。
プルーフシステム側では、128ビットのセキュリティを目標とし、プルーフサイズは300KiB以下を維持する必要がある。導入初期の数ヶ月間は100ビットセキュリティの最低水準が受け入れられるが、zkクライアントが本格稼働する段階では128ビットセキュリティへの移行が求められるとのことだ。
またイーサリアムでは、ステーカーの分散のために自宅で実行できるノードの要件を満たすように設計する目標が以前から掲げられている。
この計画でも、現在自宅でバリデーターを運営しているソロステーカーの一部が証明生成にオプトイン(参加・同意)することを想定されている。計画されているオンプレミス(自社内にサーバーやシステムを設置・運用する方式)でのリアルタイムプルービングには最大10万ドルの設備投資と10kW以下の電力消費が要求されるという。これは現在バリデーター運営に必要な約8万ドルのステーキング要件と比較可能な水準で、許容範囲内だという。
これらから最終的な目標として、遅延時間はメインネットブロックの99%について10秒以下、オンプレミス設備投資は10万ドル以下、オンプレミス電力消費は10kW以下、コードは完全オープンソース、セキュリティは128ビット以上、プルーフサイズは信頼できるセットアップなしで300KiB以下が設定されている。
なおzkロールアップとは、ゼロ知識証明(zero-knowledge proof:zkp)を活用したロールアップ方式であり、トランザクションをオフチェーンで実行したうえで、それが正しく処理されたことを暗号学的に証明する仕組み。この証明と必要なサマリーデータをイーサリアムに保存することで、セキュリティを確保しながらガス代(ネットワーク手数料)の削減やネットワーク混雑の緩和を実現する。
またロールアップは、元となるブロックチェーンのセキュリティなどを活用しながら、ガス代(ネットワーク手数料)やネットワークの混雑解消を図るスケーリングソリューションである。
参考:イーサリアム財団ブログ
画像:Ethereum