ヴィタリック、イーサリアムのトランザクションのガス上限を1677万に制限する提案

ヴィタリックが単一トランザクションのガス消費量を制限する新提案

イーサリアム(Ethereum)の共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏と研究者のトニ・ワールシュテッター(Toni Wahrstätter)氏が、単一のトランザクションが消費できるガスの上限を設ける新たな提案「EIP-7983」を7月7日に発表した。同提案は、ネットワークの安定性強化とDoS攻撃への耐性向上を目的としているという。

「EIP-7983」では、個別のトランザクションが消費できるガスを16,777,216ガス(2^24)に制限することを提案している。現在のイーサリアムでは、ブロック全体のガスリミットが約3,600万に設定されているものの、単一トランザクションに対する制限はなく、ブロックごとのガスリミットのみ存在しないので理論的には1つのトランザクションがブロック全体のガスを消費することが可能だ。

現在の設計では、単一のトランザクションがブロックの利用可能なガスをほぼ全て消費した場合、ネットワーク全体でのワークロード分散が妨げられ、ブロックの実行効率が低下するという問題がある。またゼロ知識仮想マシン(zkVM)の開発者にとって、大規模なトランザクションの並列処理が困難となり、作業を複数のトランザクションに分割せざるを得ない状況が発生している。

提案者らは、ガス上限の設定により「効率的でない負荷分散」、「二次攻撃に対する脆弱性」、「zkVMとの互換性の問題」、「並列実行における課題」といったリスクを軽減できると説明している。また並列実行エンジンにおいても、大きく異なるガスサイズが処理スレッド間での不均衡を引き起こす問題を解決できるという。

しかし新しいガス上限により、大規模なスマートコントラクトのデプロイメントなどの一部のトランザクションは、小さな単位に分割する必要が生じるという問題も発生する可能性がある。これに対し提案者らは、現在の大多数の活動は、今回提案されたガス制限の値を大幅に下回っており、この影響を受けるケースはほとんどなく一部のDapps(分散型アプリケーション)などに限定されると述べている。

ギットハブ(GitHub)上での議論では、ある貢献者が「16,777,216という数値は分割しやすく、下流のエンジニアリングを簡素化できる可能性がある」と評価している。また他の開発者らは、この提案がイーサリアムの長期的なモジュラー性と証明可能性への移行と整合していると主張している。

なお「EIP-7983」は、以前のリソース制限イニシアチブである「EIP-7825」を基に構築されており、イーサリアムのベースレイヤーがスケーリングに際してより厳格な実行保証を適用すべきであるという開発者間での合意の高まりを示している。同提案は現在ドラフト段階にあり、コミュニティからの幅広いレビューを受け付けている。

参考:Github
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
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