参加企業に規制緩和も適用
オーストラリア証券投資委員会(Australian Securities and Investments Commission:ASIC)は、同国の中央銀行であるオーストラリア準備銀行(Reserve Bank of Australia:RBA)およびデジタル金融共同研究センター(Digital Finance Cooperative Research Centre:DFCRC)と共同で進める「プロジェクト・アカシア(Project Acacia)」において、選定された14社に対し、条件付きで規制緩和を認めると7月10日に発表した。
「プロジェクト・アカシア」は、ASIC、RBA、DFCRCに加え、オーストラリア金融規制庁(Australian Prudential Regulation Authority:APRA)およびオーストラリア財務省(Australian Treasury)も支援する取り組みであり、さまざまな形態のデジタルマネーと関連インフラが、同国におけるトークン化資産市場の発展にどのように貢献するかを調査している。
プロジェクトの次のフェーズでは、地元のフィンテック企業から大手銀行まで、さまざまな組織によるユースケースが条件付きで選定された。
具体的には、19件のパイロットユースケースでは実在の資金および資産による取引が行われ、5件の概念実証(PoC)ユースケースでは模擬取引が行われる予定だ。
対象となる資産クラスは、債券、プライベートマーケット、売掛債権、炭素クレジットなど多岐にわたる。ユースケースで提案される決済資産には、ステーブルコイン、銀行預金トークン、パイロット段階の卸売型中央銀行デジタル通貨(CBDC)が含まれている。また、RBAにおける商業銀行の既存決済口座の新たな活用法も検討される。
CBDCのパイロット発行は、ヘデラ(Hedera)、レッドベリーネットワーク(Redbelly Network)、R3コルダ(R3 Corda)、キャンバスコネクト(Canvas Connect)といったパブリックおよびプライベートのパーミッション型DLTプラットフォーム上で実施される予定だ。
ユースケースの検証は今後6か月間にわたって行われ、成果報告書は2026年の第1四半期に公表される予定。RBAはこの結果をもとに、デジタル時代においてオーストラリア経済を支える金融システムの革新をどのように進めていくべきかを引き続き検討していく方針だ。
主な参加機関として、コモンウェルス銀行(Commonwealth Bank)、オーストラリア・ニュージーランド銀行(Australia and New Zealand Banking Corporation)、ウエストパック銀行(Westpac Banking)、ファイアブロックス(Fireblocks)、ノーザン・トラスト(Northern Trust)、オーストラリア債券取引所(Australian Bond Exchange)などが参加する。
オーストラリア政府は3月、ホワイトペーパー「Statement on Developing an Innovative Australian Digital Asset Industry」を発表。
この文書の中で政府は、トークン化によって清算リスクの軽減、中間業者の排除、取引の自動化およびコスト削減が期待されるとし、ホールセールCBDCが同国のホールセール市場における金融インフラの機能向上に寄与するとの見解を示している。
また、暗号資産の取引所、カストディ業者、および暗号資産を取り扱う一部の証券会社については、既存の金融サービス法(Financial Services Law)で規制する新たな法制度の導入も提案されている。