米SEC、暗号資産連動型ETFの開示要件で新指針。承認へ前進

米SECが暗号資産連動型ETFの開示要件で新指針

米証券取引委員会(SEC)が、暗号資産(仮想通貨)に連動する上場投資商品(ETP)の開示要件に関する新たな指針を7月1日に発表した。指針はSECの暗号資産規制を巡る与党・共和党の劇的な方針転換を示し、暗号資産連動型ETF(上場投資信託)の承認に向けた第一歩となった。

SECは専門の作業部会を立ち上げるなど、新規制の策定に取り組んできた。

12ページから成る指針は、SECが進める暗号資産ファンドのための新たな枠組みの第1弾となる。関係者によると資産運用会社はSECの取引・市場部門がさらに申請手続きの効率化に関する指針を公表することに期待を寄せており、一連の政策で新商品の登場が加速するとみられる。

暗号資産指数提供企業、CFベンチマークス(CF Benchmarks)のスイ・チョン(Sui Chung)最高経営責任者(CEO)は「SECは、これら全ての暗号資産を投資信託にどのように組み込むかという枠組みの整備を進めている」と述べ、SECの取り組みは承認待ちのETFの数が爆発的に増えていることに対応するものだとの見方を示した。

一方、業界関係者は、今回の指針には目新しい内容はほとんど盛り込まれなかったと話す。

複数の暗号資産ETFの承認を待っているビットワイズ・アセット・マネジメント(Bitwise Asset Management)のマット・ホーガン(Matt Hougan)最高投資責任者(CIO)は「今回の指針の最も興味深く重要な点は、それが存在しているということだ。SECは暗号資産ETPを主流の金融商品の一部だと認識し始めており、発行体とSEC職員の双方の時間と手間を省くためのルール作りをしようとしているようだ」と述べた。

指針は、承認に当たり発行体に対して、暗号資産ETF特有の要素、例えばカストディ(資産管理)の取り決めや競争の激しい市場に起因するリスクなどを「平易な英語」で明確に説明するよう義務づけている。

しかし、重要度は第2弾の指針の方が高くなりそうだ。事情に詳しい複数の関係者によると、SEC職員は現在、新たな暗号資産商品を上場するたびに取引所が提出しなければならない特別な申請書式の代わりとして、新たな上場用のひな形の作成を目指している。

特定のETFについて上場規則からの免除を求める現行の申請手続きが省略されれば、申請書の提出から上場までの期間が最大240日からわずか75日に短縮される可能性がある。

あるETF発行体の上級幹部は「SECは全ての上場に適用できる一般的な規則を模索しており、現在は取引所と正確な文言を巡ってやり取りを続けている」と明かした。

ナスダック(Nasdaq)とシカゴ・オプション取引所(CBEO)の幹部はこの協議についてのコメントを控え、ニューヨーク証券取引所(NYSE)はコメント要請に応じなかった。SECの広報担当者も、こうした協議に関するコメントを差し控えた。

エックスアールピー(XRP)、ポルカドット(DOT)、ドージコイン(DOGE)、さらにはドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領の公式ミームコイン「TRUMP」といった暗号資産の現物価格に連動するETFがSECの判断待ちとなっているが、発行体は次に登場する暗号資産商品は、時価総額で世界6位の暗号資産であるソラナ(SOL)に連動するETFだと予想している。ただ、ソラナ連動ETFの登場はSECが第2弾の指針を公表した後になり、実際の上場は早くても初秋になると見られる。

一方、既に動き出している資産運用会社もある。レックスシェアーズ(REX Shares)とオスプレー・ファンズ(Osprey Funds)は7月2日、より間接的で複雑な構造を採用し、ソラナへの投資機会を提供する米国初のETFを上場した。このETFは承認待ちの6つの現物ソラナ連動型ETFと異なり、ソラナや非米国籍ソラナファンドを保有する別法人に投資する仕組みとなっている。

この構造により、商品ファンドに適用される規制を回避できるだけでなく、他の発行体に先んじて市場への投入が可能になるほか、「ステーキング」という暗号資産特有の利回り獲得手段を投資家に提供することが可能になっている。REXファイナンシャルのグレッグ・キング(Greg King)CEOによると、同ETFは1日の取引初日に1,200万ドルの資金を集めた。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
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画像:Reuters

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