Binance Pay活用で観光経済強化狙う
ブータン王国政府のウォレットは、継続的に暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)へビットコイン(BTC)を送金しており、国家レベルでのバイナンス活用が続いていることが、オンチェーン分析プラットフォーム「アーカム(Arkham)」のデータから確認できる。
このウォレットは6月30日に約137BTCをバイナンスに入金。記事執筆時点(2025年7月1日)でブータン政府は11,924BTCを保有しており、その総額は約12.8億ドルに相当する。一部報道では、この金額がブータンの国内総生産(GDP)の約40%に匹敵すると伝えられている。
なお、2024年12月9日にも同じバイナンスのアドレスに約100BTCを送金していた履歴がある。
こうしたブータンの動きは、同国が推進する「クリプト活用型観光経済」戦略とも一致する。
米コインデスク(CoinDesk)によれば、バイナンスとブータン政府が共催した「Digital Bhutan」のパネルにて、政府関係者が「暗号資産を理論から日常へ」との方針を明示し、国家規模での暗号資産インフラ導入に積極的な姿勢を示したという。
ブータン観光局のダムチョ・リンジン(Damcho Rinzin)局長は、「旅行者からSWIFTが使えず支払いが不便との声が多く寄せられていたが、バイナンス・ペイ(Binance Pay)がその問題を解決する」と述べた。すでに旅行者が現地で暗号資産を使って食材などを購入する例も報告されている。
年間約30万人が訪れるブータン王国は、長期滞在や高額消費を促進する観光戦略の一環として、バイナンス・ペイの4,000万人超のユーザー基盤を活用したい考えだ。バイナンスのCEOであるリチャード・テン(Richard Teng)氏は、「投機からインフラへ」という方針転換を強調し、「暗号資産を利用する観光客の平均消費額は1,000ドルで、通常の旅行者の約3倍に達する」と述べた。
現在、ブータン国内では1,000以上の加盟店がバイナンス・ペイに対応しており、利用手数料も無料とされている。かつて同国の初期ビットコイン・マイニングに携わったDK銀行(DK Bank)は、現在地元での暗号資産導入の中心的役割を担っている。
DK銀行のCEOであるウゲン・テンジン(Ugyen Tenzin)氏は、「すでにモバイル決済やQR決済が普及しているブータンでは、暗号資産との親和性が非常に高い」とコメントしている。