アブダビの政府系投資会社MGX、バイナンスへ20億ドル出資、暗号資産分野に初参入

MGXがバイナンスへ20億ドル出資

アブダビ政府が支援する投資グループMGXが、大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)に対し、20億ドル(約2,965億円)規模の投資を行ったと、両社が3月12日に発表した。この取引により、世界最大の暗号資産取引所とアラブ首長国連邦(UAE)の関係がさらに深まることとなる。

バイナンスは今回の取引を「初の機関投資家からの出資」と位置づけており、暗号資産業界においても過去最大級の投資案件の一つとなる。MGXはこの投資を通じてバイナンスの少数株主となる見込みで、投資はステーブルコインで行われる。

バイナンスの広報担当者は、「合意されたガバナンス権限」やMGXの持分比率、またどのステーブルコインが使用されたのかについてのコメントを控えた。MGXも詳細についてのコメントを拒否した。

バイナンスは、2017年に中国で長者のチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏によって設立され、ビットコインやその他の暗号資産取引への需要拡大を背景に、世界最大の暗号資産取引所へと成長した。

しかし、CZ氏はバイナンスにおける米国のマネーロンダリング防止法違反を認め、昨年数カ月間収監された。

その後、CZ氏の後任には、以前にアブダビ金融サービス庁のトップを務めていたリチャード・テン(Richard Teng)氏が就き、同氏のもと、バイナンスはUAEとの関係を強化してきた。

バイナンスは12日の発表で、UAEにおける事業規模について「大規模なプレゼンスを確立している」とし、全従業員5,000人のうち約1,000人がUAEで勤務していることを明らかにした。

今回のバイナンスへの投資は、MGXにとって暗号資産分野への初の公式参入となる。MGXは約1年前に設立され、「AIや先端技術の開発および普及を加速させる」ことを目的としたパートナーシップを推進するとしていた。

UAEは、暗号資産を含むデジタル資産のグローバルハブを目指しており、経済の多角化戦略の一環として、世界有数の企業を誘致する取り組みを進めている。

MGXのCEO兼マネージング・ディレクターのアフメド・ヤヒア(Ahmed Yahia)氏は声明の中で、「MGXのバイナンスへの投資は、ブロックチェーン技術が持つデジタル金融への変革力を推進するという私たちのコミットメントを示している」と述べた。

MGXは、OpenAIやイーロン・マスク(Elon Musk)氏のxAIにも投資している。また同社の会長はUAEの国家安全保障顧問であり、UAE大統領シェイク・モハメド・ビン・ザイード(Sheikh Mohammed bin Zayed)氏の弟であるシェイク・ターノン・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン(Sheikh Tahnoon bin Zayed Al Nahyan)氏が務めている。また、アブダビの3,300億ドル規模の政府系ファンド「ムバダラ(Mubadala)」もMGXのパートナーである。

暗号資産業界はここ1年間で復調の兆しを見せており、2022年に発生した一連のスキャンダルや倒産によって投資家が大きな損失を被った状況から回復しつつある。

また暗号資産で最大の時価総額をもつビットコインは、暗号資産推進派であるドナルド・トランプ(Donald Trump)氏の米大統領選の当確後、史上最高値を更新した。

2月には、証券取引委員会(SEC)がバイナンスを相手取って起こした民事訴訟について、米連邦判事は60日間保留することを認めた。

テン氏は昨年12月のロイターの取材に対し、バイナンスは現在もグローバル本社の拠点を模索していると述べた。これは、CZ氏に対する刑事告発や、バイナンスが2023年に米国で43億ドルの罰金支払いに合意したことを受け、透明性を高めるための動きとみられている。

1月にフランスの捜査当局は、マネーロンダリング、脱税、その他の容疑についてバイナンスに対する司法捜査を開始したと発表したが、バイナンスはこれらの容疑を否定している。

「今回のMGXによる投資は、暗号資産業界全体、そしてバイナンスにとって大きな節目となる。私たちは共に、デジタル金融の未来を形作っていく」とテン氏は述べた。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Abu Dhabi-backed investor buys into Binance with $2 billion of crypto
(Reporting by Elizabeth Howcroft in Paris and Federico Maccioni in Dubai. Editing by Tommy Reggiori Wilkes and Mark Potter)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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