ANAPが初のビットコイン建て増資
東証スタンダード上場企業のANAPホールディングスが、ビットコインによる第三者割当増資を実施することを6月9日に発表した。
同社は今回、新株式および新株予約権の発行を決議。新株発行では公正発行にて約115億円、有利発行で約51.2億を調達する予定。また新株予約権では約58.3億円の調達が見込まれている。
今回ビットコイン建てで増資されるのは、公正発行で調達する約115億円のうち約80億円だ。投資ファンドのキャピタルタイフーンが保有するビットコイン80億円相当が現物出資される。なお残りの35億円はネットプライス事業再生合同会社が金銭債権で現物出資する。7月18日予定の臨時株主総会での承認を条件に、7月22日に払い込みが完了する予定とのことだ。
なお今回のビットコイン現物での増資は、国内上場企業としては初めてとみられる。この動きは、会社法が定める現物出資の枠組みをビットコインにも適用した国内初の公開事例となる。
※2025.6.13 17:00 上記一文に誤った表現がありましたので、修正いたしました。
ANAPホールディングス 代表取締役会長 川合林太郎氏へ取材
「あたらしい経済」編集部は株式会社ANAPホールディングスの代表取締役会長(CEO)兼執行役員の川合林太郎氏へ以下の質問をし、その回答を得た。
–今回のビットコイン現物での増資は日本で初の事例となりましたが、実現までにどのようなハードルがあったのでしょうか?また今回、初の事例となったことは、どのような意義があると思われますか?
制度上は現物による出資が認められており、ビットコインも明確には禁止されていはいませんが、前例が無いため、規制当局とは数か月に亘ってやり取りをさせて頂いた上でIRを受理して頂きました。このことは金や通貨と同等なものとしてビットコインを金融庁、関東財務局、東証に認めて頂いたという観点から非常に重要な意義がある事と考えています。
※2025.6.13 18:00取材内容追記
ビットコイン事業開始決定も
またANAPホールディングスは同日、子会社であるANAPライトニングキャピタルが「ビットコイン事業」を開始することが決定したと発表した。
ANAPライトニングキャピタルは今年4月16日にビットコインを購入開始して以降、複数回にわたりビットコインを取得し、財務戦略の一環としてのビットコイン保有を強化している。なお同社の5月28日時点のビットコイン保有数は計102.9001BTCとなっている。これまで同社はビットコインに14億7,163万8,972円を投資している。
ANAPホールディングスはこれまでのビットコインへの取り組みにより蓄積した知見をもとに、ビットコインおよびその関連ビジネスを同社グループの新たな成長ドライバーとすべく「ビットコイン事業」として本格的に展開すると述べている。
発表によると「ビットコイン事業」では、中長期的にビットコイン保有をする「ビットコイントレジャリー戦略」と「ビットコイントレーディング戦略」を戦略の柱としつつ、「ビットコイン関連ライフスタイル事業」、「ビットコイン関連テクノロジー事業」を展開していくという
なお「ビットコイントレジャリー戦略」においては、2025年8月期末までに1,000BTC以上の保有を計画しているとのこと。
「ビットコイントレーディング戦略」では、ビットコインおよびそのデリバティブ(金融派生商品)の売買を通じて、収益機会の獲得を目指すという。
「ビットコイン関連ライフスタイル事業」では、国内外のビットコイナー(ビットコインのハイエンド・ユーザー層)、特に購買力の高い層をターゲットとした、高機能かつデザイン性に優れたライフスタイルブランド・商品の企画・開発および販売を行うという。ANAPグループが有するブランド構築力と商品開発力を活かし、早期に新規ブランドを立ち上げ、実店舗およびEコマースでの展開を計画しているとのことだ。
そして「ビットコイン関連テクノロジー事業」では、ブロックチェーン技術を活用した新規サービスの開発、ビットコイン決済関連事業など、ビットコイン関連技術領域における事業機会を追求するという。またマイニング事業への参画や保有ビットコインの戦略的活用手法関連事業も検討しているとのことだ。
またANAPホールディングスでは事業推進体制の強化として、グローバルに活躍するビットコイン分野の第一人者を招聘するし「グローバル・アドバイザリーボード」を設置するという。同ボードからは、事業戦略や業界動向に関する専門的な助言を得る予定とのことだ。
なおこの発表翌日10日、ANAPホールディングスの株価は前日終値 964円から1,114円に高騰。 ストップ高水準で買い気配となっている。