ビットコイン開発者にエドワード・スノーデンが警鐘鳴らす、プライバシー強化は急務

ビットコインのプライバシーの欠如を批判

米中央情報局(CIA)の元職員エドワード・スノーデン(Edward Snowden)氏が、ビットコイン開発者へ警鐘を鳴らしている。このことは5月3日に同氏のXアカウントからポストされている。

これはセルフカストディウォレット「ワサビ・ウォレット(Wasabi Wallet)」提供のzkSNACKsが、6月1日をもってコインジョイン(coinjoin)コーディネートサービスを終了することを受けてのものだ。

コインジョインは、ユーザーがオンチェーン監視を阻止するために、使用されていないトランザクションアウトプット(UTXO)を混合するもの。同サービスが終了しても、「ワサビ・ウォレット」は通常のビットコインウォレットとして機能するが、ビットコインのブロックチェーンの性質上、コインジョインなしで完全なプライバシーを得られないと同社は説明している。

スノーデン氏は「私は10年間、ビットコインの開発者たちに、プライバシーはプロトコル・レベルで提供される必要があると警告してきた。これが最後の警告だ。時は刻々と迫っている」と述べている。

米当局による規制の影響を受け、zkSNACKsは同社提供のセルフカストディウォレット「ワサビ・ウォレット(Wasabi Wallet)」の米国での使用をブロックしている。

これにより米国市民および米国居住者は、zkSNACKsのWebサイトへのアクセス、「ワサビ・ウォレット」およびAPIやRPCインターフェースを含む関連製品やサービスのダウンロード及び使用が禁止されることになった。

またビットコインウォレットのAcinqの「フェニックス・ウォレット(Phoenix Wallet)」も5月3日に米国のアプリストアから撤退することを発表している。

スノーデン氏は2013年、米国家安全保障局(NSA)の監視プログラムに関する文書を報道機関にリークし、米政府からスパイ容疑で起訴された。逮捕前に、同氏はロシアに亡命。現在はロシアで暮らしている。

長きにわたりビットコインユーザーであることでも知られている同氏は2013年、ジャーナリストにリークした資料を保管するためのサーバー代金をBTCで支払っていたことを明かしている。

また同氏は、暗号資産のプライバシーを守るプロジェクトへの支援でも知られている。

スノーデン氏はトルネードキャッシュ(Tornado Cash)の共同創設者であるローマン・ストーム(Roman Storm)氏の弁護費用を集めるキャンペーンへの支持を仰ぐポストを今年1月にXで行った。

トルネードキャッシュは、複数ユーザーの暗号資産の取引をミキシングすることで、その取引履歴を匿名化できるサービス。その特性が犯罪に関与した資産のロンダリングに利用されているとして、2022年8月に米財務省外国資産管理局(OFAC)から制裁対象に加えられている。

なおプライバシーのリスクがあるとの批判にさらされているワールドコイン(Worldcoin)については、2021年にプロジェクトを紹介したサム・アルトマン氏のツイートに対し、「目玉をカタログ化するな」とスノーデン氏はつぶやいている。

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参考:ワサビ・ウォレット
images:iStocks/scyther5・LongQuattro

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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