ParityがEthereumクライアント開発を「Open Ethereum」へ移行

DAO的な組織OpenEthereumについて

Ethereumコミュニティにとってはマイナス、Polkadotコミュニティにとってはプラスのニュースではないだろうか。

Parity TechnologiesがEthereumクライアントの主開発から離れることが明らかになった。そして、イーサリアムのクライアントを引き継ぐのは、DAO的な組織で新たに設立したOpenEthereumになる予定だ。DAOとは「Decentralized Autonomous Organization」の略称。日本語では「自立分散組織」と言われる。

DAOの特徴は、1ネットワークはブロックチェーンを利用している2.代表者や管理者が存在しない3.意思決定のプロセスやガバナンスがコードベースで形成されている4.トークンにより報酬や権利が与えられる、となっている。

今後、OpenEthereumのメンバーにParity Technologiesも加わる。同社は、OpenEthereumではメンターシップの役割に変わり、新たにメンバーをオンボーディングし、クライアント開発を前進させるツールを提供する予定である。

そしてOpenEthereumのガバナンス管理は、Stake Weight Token System(ステークウェイトトークンシステム)で行われていく予定だ。

さらに、既存または将来のOpenEthereum エコシステムへの貢献者と協力して、エコシステムの最終意思決定プロセスにおける公平かつ透明性の高いトークン分配システムを開発していく。

同社の動きを、Ethereumのコアメンバー、Polkadotのメインプレイヤーはどう捉えているのだろうか。それぞれのプレイヤーに取材を行った。

編集部は、Ethereum財団のHudson Jameson氏に「OpenEthereumについてどう思いますか?」と質問をした。

すると、同氏は「私は、ParityがなぜDAO的な組織を形成するのか理解できません。彼らは、なぜDAOが必要なのかを説明するべきです」と答えてくれた。

続いて、Polkadotのコアプロダクトを開発している企業Stake Technologiesの渡辺創太氏へ取材を行った。

編集部は、同氏へ「今回のParityの動きをPolkadotコミュニティ側の人からすると、どのように捉えていますか?」と質問をした。

渡辺氏は「ParityがEthereumのクライアントをDAO型の運営に移行するということは、実質Ethereumへのコミットを減らすことと同義だと思います。そのリソースをどこに使うのか?というのが大事な趣旨かと思いますがParityが主体となって開発するオープンソースであるSubstrateでしょう。SubstrateとはブロックチェーンフレームワークでありPolkadotに接続するブロッチェーンは全てSubstrateを用い作られます。個人的に最もエキサイティングなのはEthereumとPolkadotのブリッジです。異なるパブリックチェーンがPolkadotを経由して繋がるのはまさに2020,2021に実現する未来でしょう」と答えてくれた。

Parity Technologisの今後の対応

今後、Parity Technologisは数週間にわたって、Ethereum財団、ETC Labs、Gnosis、POA Network、その他の貢献者を含む主要な利害関係者とOpenEthereumについて話し合っていく。OpenEthereumの構造と詳細はいまだに未定ですが、同社が保有するライセンスをDAOに転送し、そしてコードベースを独自のGitHub組織に移行し、それに応じてクライアントの名前を変更する予定のようだ。

記者は、同社がEthereum周辺の開発から離れ、Polkadotコミュニティへの貢献に最大限のリソースを注ぎたいのだろうと考える。Ethereumコミュニティにとっては、痛い展開だ。

 

参考記事:Transitioning Parity Ethereum to OpenEthereum DAO

 

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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