BISやイスラエル・ノルウェー・スウェーデンの中銀、CBDC調査プロジェクト終了

Project Icebreakerが終了、安価で安全な国際決済実現へ

国際決済銀行(BIS)およびイスラエル・ノルウェー・スウェーデンの中央銀行によるリテール(小売)型CBDC(中央銀行デジタル通貨)のクロスボーダー決済に焦点を当てた共同の調査事業「プロジェクト・アイスブレイカー(Project Icebreaker)」が終了した。BISが3月6日発表した。

このプロジェクトは昨年9月に立ち上げられたもので、今回の発表はその経過報告となる。

同プロジェクトでは、従来の国際決済における手数料の高さや処理時間の長さなどの課題の解決を目標として、CBDCのクロスボーダー決済の実現に向けた調査が行われていた。具体的にはCBDCシステムの概念実証を行うためのハブ(アイスブレイカー・ハブ)を設置し、異なる国のCBDCを相互接続するための主要機能(ハブ&スポーク・ソリューション)と技術的実現可能性を検証するものだ。

CBDC国際決済の利点

報告によると「プロジェクト・アイスブレイカー」での調査により、ハブ&スポーク・ソリューションがクロスボーダー取引を数秒以内に完了できることが実証されたとのこと。また同ソリューションは各中央銀行の決済条件を揃えるため、決済リスク及びカウンターパーティーリスクも低減することが分かったという。

また同プロジェクトでは多くの為替プロバイダーが見積もりを提出することで流動性が確保されるため、従来の国際決済よりも大幅に低い手数料でリテールCBDCの即時送金が行えるという。アイスブレイカー・ハブのシステムでは、特定の2つの通貨間の取引が不可・不利な場合にブリッジ通貨を使用することで、外国為替プロバイダー間の競争を促進する仕組みになっているという。

またプロジェクトでは、異なる技術で稼働する国内システムを統合できるよう、最小限の技術要件を想定し、拡張性・相互運用性・簡素化を促進しているという。

BISのイノベーション・ハブ代表であるセリシア・スキングスレー(Cecilia Skingsley)氏は、同プロジェクトは「中央銀行がほぼ完全な自律性を持つことを可能にする」ものだとし、「同じCBDCを国際決済に使用するためのモデル」を提供するとコメントしている。

スウェーデン国立銀行副総裁のアイノ・ブンゲ(Aino Bunge)氏は「国内での決済はより安価で安全かつ効率的になったが、通貨をまたぐ決済は依然として高コスト・低スピード・ハイリスクだ。CBDCを検討する際には、最初から通貨をまたぐ可能性を盛り込むことが重要」と述べている。

関連ニュース

参考:国際決済銀行(BIS)
デザイン:一本寿和

images:iStock/StationaryTraveller・Ninja-Studio

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

合わせて読みたい記事

ハッシュポート、FosunとRWA分野のジョイントベンチャー設立

HashPort(ハッシュポート)が、香港証券取引所に上場するFosun International Limited:Fosun(フォースンインターナショナルリミテッド)の子会社であるFosun Entertainment Japan:FEJ(フォースンエンターテイメントジャパン)と共同で、ジョイントベンチャー「Fosun Real World Asset:Fosun RWA(フォースンリアルワールドアセット)」を設立した

トークン化ダイヤモンドへの投資が可能に、Oasis ProとAvalanche活用でDiamond Standardがファンド通じて

ダイヤモンド・スタンダード(Diamond Standard)とホライゾン・キネティクス(Horizon Kinetics)が出資するダイヤモンド・スタンダード・ファンド(Diamond Standard Fund)へ投資するトークンが、アバランチ(Avalanche)のCチェーンを通じて、米証券取引委員会(SEC)認可の暗号資産証券取引プラットフォームであるオアシス・プロ・マーケット(Oasis Pro Market)に上場した

【3/28話題】SEC訴訟でコインベースの棄却申し立てを米判事却下、取引延期のエルフトークン明日取引開始へなど

米連邦判事、SEC訴訟に対するコインベースの棄却申し立て却下、ビットフライヤー、取引延期のエルフトークン(ELF)を明日取引開始へ、HSBC、香港で金のトークン化商品を発売へ=報道、イーサリアムL2「ブラスト」上のGameFi「Munchables」、約94億円のエクスプロイト被害、「日本DAO協会」が4月1日設立へ、DAO発展の環境整備へ、東京スター銀行、三井物産のデジタル証券サービス「オルタナ」導入。地域金融機関初のST取扱、SBIや九州電力らの「まちのわ」、金沢大学と「ファン通貨」で被災地復興支援へ、B Dash VenturesとHashed、「Blockchain Leaders Summit Tokyo 2024」7/24に共催へ