ヘッジファンドの投資パフォーマンス、2022年は低迷=HFRデータ

ヘッジファンドの投資パフォーマンス、2022年は低迷

昨年(2022年)、ヘッジファンドは市場の混乱の中でポートフォリオマネージャーが勘所を見つけるのに苦労し、主に株式に引きずられ、2018年以来最悪のパフォーマンスを記録したと、業界データプロバイダーのHFRが1月9日に発表した。

世界最大のヘッジファンドのパフォーマンスを多数追跡している「HFRI 500 Fund Weighted Composite Index」によると、ヘッジファンド全体では昨年、投資パフォーマンスが4.25%下落したとのことだ。

株式ヘッジファンドは、HFRが追跡している4つの主要なヘッジファンドカテゴリーの中で、2022年に最も悪いパフォーマンスを記録した。 それでも10.37%の損失というのは、2008年以来最悪の年に19.4%下落したS&P500を上回った。

企業の合併や再編に携わるイベントドリブン・ヘッジファンド(Event-driven hedge funds)や、資産価格の乱高下を取引対象とするレラティブバリュー・ファンド(relative value funds)も、それぞれ5.04%、0.9%の損失を計上している。

暗号資産(仮想通貨)関連のヘッジファンドは、今年のわずか3ヶ月でプラスのリターンを計上した後、55.08%も価格が暴落した。巨額の損失にもかかわらず、暗号資産ヘッジファンドは業界の資産3兆8000億ドルのごく一部を占めるに過ぎない。

昨年、株式と暗号資産のポートフォリオ・マネージャーが困難に直面する一方で、ヘッジファンド投資家はリターンを得るための明るい領域(スポット)を見つけたようだ。HFRが世界の市場動向をマクロの視点から分析して予測を行い投資を行うマクロヘッジファンドが業界をアウトパフォームしたと示した。

HFRIマクロ・インデックスは9.31%上昇し、主にコモディティ、クオンツ、トレンドフォロー戦略がけん引したと、HFRが伝えている。

ヘッジファンドアドバイザリー会社サセックス・パートナーズ(Sussex Partners)のマネージングパートナーであるパトリック・ガリ(Patrick Ghali)氏は、「投資家は、昨年の業界のパフォーマンスを理解するために、実際に何が起こっていたのか表面上は見えない部分を理解する必要があります。ちなみにロングショートのヘッジファンドは、業界の中で最も資産ウェイトが大きいです。全体として、ヘッジファンドにとって良い年だったと思います」と伝えている。

マクロヘッジファンドは、債券、通貨、金利、株式、コモディティなど幅広い資産をグローバルに取引している。このため、金利上昇やインフレの進行による資産価格のばらつきの中で、賢く投資をすることができた。

ロイターは今年初め、市場の不安定な環境が続く中、投資家はマクロヘッジファンドが今年も業界をアウトパフォームする可能性が高いとみていると報じていた。

昨年の混乱は、異なる資産や市場にまたがって取引することが許されるマルチストラテジー・ヘッジファンドにとっても好材料であったことが証明された。

ケネス・グリフィン(Kenneth Griffin)氏が率いるシタデル(Citadel)は、旗艦ファンドのウェリントンで38.1%の利益を上げ、D.Eショー氏が率いるコンポジットファンド(Composite Fund)は24.7%、ミレニアム(Millennium)は12.4%の上昇を記録している。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。

(Hedge funds in 2022 post worst performance since 2018, dragged down by equities -HFR data Reporting by Carolina Mandl, in New York; Editing by Chris Reese and Lincoln Feast.)

images:ロイター

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この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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