【取材】NFTとFTを異なるチェーン間で同時移転、日立とDatachainが共同開発へ

日立とDatachainが共同開発へ

日立製作所とDatachainが、Hyperledger Fabric(ハイパーレジャーファブリック)上のERC-20トークンとHyperledger Besu(ハイパーレジャーベイス)上のERC-721トークンの同時移転(アトミックスワップ)の実現のため、共同開発を実施することが11月11日分かった。

発表によると今回の取り組みでは、「ファンジブルトークンの標準規格であるERC-20に準拠したトークン」と「ノンファンジブルトークン(NFT)の標準規格であるERC-721に準拠したトークン」を用いることで、トークン化されたアセットの「権利移転」と「支払い」という2つの取引を同時に実行することを目指すとのこと(なお2つの取引を同時に行う決済手法を「DVP決済」と呼ぶ。これにより元本リスクの軽減が見込まれる)。

今回の共同開発環境は、Datachainが開発をリードするHyperledger Lab YUIの構成要素である「IBC Module」を用いて、Hyperledger FabricとHyperledger Besuの双方のブロックチェーン上にお互いのトランザクションを検証するためのモジュールを配置するという。そしてHyperledger Fabric上にERC-20トークンを発行し、Hyperledger Besu上にはERC-721に準拠したNFTのトークンを発行するとのこと。

この環境にて、DatachainがOSSとして提供するCross Framework(クロスフレームワーク)を用いることで、各ブロックチェーン上のアセット移転の取引を同時に実行し、アトミックスワップを実現するとのことだ。なおクロスフレームワークは複数のブロックチェーンにまたがって(クロスチェーンの)スマートコントラクトの実行を可能にするためのフレームワークだ。

また両者が共同で開発を行ったサンプルコードは、Linux Foundationが運営する世界最大級のブロックチェーンOSSコミュニティであるHyperledger Foundationに寄贈する予定とのことた。

「IBC Module」とは

「IBC Module」は、ブロックチェーン基盤においてIBCを用いて相互運用性(インターオペラビリティ)を実現する為のモジュール。IBCとはインターチェーン財団およびCosmosプロジェクトによって策定が進んでいる、ブロックチェーン同士の相互運用性を担保するための仕様標準のことだ。

株式会社Datachain 事業企画 吉田基紀氏へ取材

あたらしい経済編集部は株式会社Datachain 事業企画 吉田基紀氏へ取材を行った。

–「トークン化されたアセットのDVP決済」が出来るようになることで、どんなメリットがあるのでしょうか?

例えば、貿易において、取引される物品の所有権をトークンで表現し、そのトークンの移転と同時に決済を実行することによって、物品の所有権と支払用の資金の双方が同時に移転することを保証できるようになります。言い換えると、物品の所有権だけが移転してしまい資金が移転しないことや、逆に物品の所有権が移転せずに資金だけが移転してしまうといった「取りはぐれ」のリスクを軽減することができます。

これは、他にも証券の領域においても同様で、証券の所有権移転と決済を同時に行うことで、取りはぐれのリスクを軽減することができます。

このように、様々なビジネスケースにおいて、トークン化されたアセットの移転と決済を同時に行うことでビジネス的なメリットがあると考えています。

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参考:Datachain
デザイン:一本寿和
images:iStocks/PerlaStudio

この記事の著者・インタビューイ

大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
記者・編集者
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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