北朝鮮関連とされた開発者がコンサルタントとして参加
メタマスク(MetaMask)を開発するブロックチェーン企業コンセンシス(Consensys)が、北朝鮮とつながりがあるとされたソフトウェア開発者の紹介を第三者サービス事業者から受け、コンサルタントとして開発業務に参加させていたと、米メディア「ドロップサイトニュース(Drop Site News)」が7月17日に報じた。
ドロップサイトニュースによると、同開発者は「タイラー・ナップ(Tyler Knapp)」という偽名を使用し、コンセンシスの開発業務に参加していたとのことだ。また、ギットハブ(GitHub)では「imyugioh」というアカウント名を使用していたとされる。
同メディアが入手した社内スラック(Slack)のメッセージでは、同開発者がメタマスクの中核プラットフォームのコードや、第三者の決済事業者を介した暗号資産(仮想通貨)と法定通貨の交換に関連する部分の開発に携わっていたという。また公開されているギットハブの記録からも、同アカウントによるメタマスクのモバイルウォレットへのコード提供が確認できるとのこと。
一方、コンセンシスは調査の結果、資産やデータの不正取得や悪意あるコードの導入、利用者の安全やセキュリティへの影響は確認されなかったと説明。また、法執行機関へ通報するとともに、関連情報を提供したとのことだ。
ギットハブの記録では、同アカウントによるメタマスクへのコード提供は2026年3月9日に始まり、4月に停止している。ドロップサイトニュースは、この時期がアクセス停止のタイミングと一致することから、同開発者が約1カ月間にわたりコンセンシスのシステム内で作業できる状態にあったと報じている。
コンセンシスの法務責任者マット・コーバ(Matt Corva)氏は、同開発者が信頼できる第三者サービス事業者との既存の取引関係を通じて紹介されたと説明した。同氏によると、開発者はコンセンシスの従業員として採用されたのではなく、コンサルタントとして同社と協働していた。紹介後ほどなくして脅威を発見し、アクセスを直ちに停止するとともに、包括的な調査を開始したという。
一方、コンセンシスは同開発者と北朝鮮とのつながりをどのように特定したかについては明らかにしていない。そのため、公開情報から両者の関連性を独立して確認することはできない。
ドロップサイトニュースによると、コンセンシスは2026年4月、調査が完了するまで全製品のリリースを直ちに停止するよう社内に指示したとのこと。その後の社内調査で、同開発者が北朝鮮とつながっていると判断されたとのことだ。
コンセンシスは今回の事案を受け、エンジニアリングや開発業務を外部委託する際の運用を見直した。従業員に適用する厳格な基準を、第三者サービス事業者との取引にも適用できるよう改善したとのことだ。
なお、近年は北朝鮮系ITワーカーによる偽名や偽装した身元情報を用いた海外企業への就業が相次いでいる。また、ソーシャルエンジニアリングを利用した暗号資産企業への侵入事例も報告されている。特に暗号資産業界では、開発者がソースコードだけでなく、トランザクション署名インフラにまで及ぶ可能性があることから、採用時の本人確認やサプライチェーンセキュリティの重要性が高まっている。
また、北朝鮮の関与が疑われる暗号資産業界への攻撃では、今年4月に分散型取引所ドリフト(Drift Protocol)でソーシャルエンジニアリングを伴うインシデントが発生した。ウォール・ストリート・ジャーナル(The Wall Street Journal)によると、攻撃者側は数カ月にわたりドリフト関係者との信頼関係を構築していたとみられる。さらに2025年7月には、オンチェーン調査官ザックXBT(ZachXBT)氏が、北朝鮮系ITワーカーへの組織的な報酬の支払いに関する分析をXで公表している。
今回のコンセンシスの事案は、暗号資産業界において北朝鮮系ITワーカーへの対応や、委託先を含めた本人確認・サプライチェーン管理の重要性を改めて示す事例となった。
参考:ドロップサイトニュース
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