香港がデジタル資産規制を緩和、トークン化の試験プログラム開始へ

香港がデジタル資産規制を緩和

香港政府が、デジタル資産取引と投資を促進するため規制を緩和し、トークン化のパイロット制度を導入すると11月3日に発表した。香港が、フィンテックおよびデジタル資産の主要ハブとしての地位確立を目指す動きだ。

現地認可の仮想資産取引プラットフォーム(VATP)が海外の関連会社とグローバルなオーダーブックを共有できるよう規制を緩和すると、香港証券先物委員会(SFC)のジュリア・ルン(Julia Leung)委員長が香港フィンテック・ウィークの会場で述べた。

この措置は、これまでVATPのオーダーブック(暗号資産の売買注文一覧)を香港内でリングフェンス(分離管理)することを求めていた現行規制を緩めるもので、グローバルな流動性の活用を狙う。

さらにVATPは運用実績が12カ月未満の暗号資産や、香港で規制されたステーブルコインを、プロ投資家に販売できるようになる。これは、従来必要だった最低1年の運用実績要件を緩和するものだ。

こうした規制調整は、デジタル資産投資への需要が高まる中、シンガポールや米国との競争を強め、香港のフィンテック・ハブとしての地位を固める狙いがある。

一方で、香港の広範な金融セクターは、デジタル・トランスフォーメーションとトークン化への投資拡大の恩恵を受ける見通しだと、事実上の中央銀行である香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority:HKMA)が述べた。

HKMAは3日、「フィンテック2030(Fintech 2030)」ロードマップを公表し、データ、人工知能(AI)、レジリエンス、トークン化に焦点を当てるとした。

この取り組みの一環として、HKMAはサンドボックス「エンサンブル(Ensemble)」を前進させ、トークン化預金およびデジタル資産における実価値(リアルバリュー)取引を可能にするとした。

HKMAのエディ・ユエ(Eddie Yue)総裁は同フォーラムで「今後、トークン化預金が大きな優位性を発揮できる成熟した実価値ユースケースの育成を始める。まずはトークン化マネー・マーケット・ファンド(MMF)から着手する」と述べた。ただし規制当局は、こうした実価値アプリケーションの詳細を明らかにしなかった。

ユエ総裁はさらに 、「この(デジタル)変革を後押しするのは巨額のテクノロジー投資で、今後3年間、年間総額は1,000億香港ドル(約12.9億ドル / 約1兆9,879億円)を超える見通しだ」と付け加えた。

香港では今年、香港ドル建ておよび米ドル建てのトークン化MMFの新規設定が相次ぎ、利回りを求めるデジタル・ネイティブ資本の世界的潮流を反映している。

主要グローバル銀行の幹部2名によれば、トークン化商品は人気を増し、デジタル化された通貨が主流化する中で多額の資金流入を引き付けているという。

HSBCのジョルジュ・エルヘデリ(Georges Elhedery)CEOはパネルディスカッションで、香港でローンチした同行のトークン化ゴールド商品が、現在では世界で3番目に大きな同種商品となり、「個人投資家による大規模な採用」を得ていると述べた。

また同じパネルでスタンダードチャータード(Standard Chartered)のビル・ウィンターズ(Bill Winters)CEOは、「私たちの見解であり、香港のリーダーシップも同様の考えだと思うが、ほぼすべての取引は最終的にブロックチェーン上で決済され、あらゆる通貨はデジタル化されるだろう」と述べた。

※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Hong Kong to ease digital asset rules, launch tokenisation pilot scheme
(Reporting by Selena Li, Kane Wu and Scott Murdoch; Editing by Sam Holmes and Jacqueline Wong)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters

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大津賀新也

「あたらしい経済」編集部
副編集長
ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

「あたらしい経済」編集部
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ブロックチェーンに興味を持ったことから、業界未経験ながらも全くの異業種から幻冬舎へ2019年より転職。あたらしい経済編集部では記事執筆の他、音声収録・写真撮影も担当。

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