イーサリアム(ETH)は年末1万ドルに達する=アーサーヘイズ予想

米国の経済的ファシズムが暗号資産の価格を押し上げる

海外暗号資産(仮想通貨)取引所ビットメックス(BitMEX)の共同創業者であるアーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏は、イーサリアム(ETH)の価格が2025年末までに10,000ドル(約146万円)へ到達するとの見方を示している。

ヘイズ氏は7月22日に公開したブログ「タイム・シグネチャ(Time Signature)」の中で、米国が国家主導による産業再編へと傾斜する中、それが暗号資産市場にとって強気材料となると論じた。政府が主導して信用を拡大する今、投資家は「市場のビート(信用創造)」に合わせて行動すべきだと述べている。

ヘイズ氏は、従来の中央銀行による量的緩和(QE)とは異なり、政府保証を伴う商業銀行融資によって信用が拡張される新たなモデルを「QE for Poor People(貧者のための量的緩和)」と表現。これは、政府が一定の産業分野において買い取りを保証することで、商業銀行による融資を後押しし、その結果として民間主導の信用拡張と経済成長が生まれるという仕組みだ。

具体例として、MPメタリアル(MP Materials)社が建設するレアアース精製施設に対し、米国防総省が買い取り保証を提示し、それを受けてJPモルガン(JP Morgan)やゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)が10億ドル(約1,463億円)規模の融資を実行するケースを紹介している。この構造により雇用が生まれ、経済活動が活性化し、信用創造のサイクルが回り始めるという。

こうした米国の動きは、自由市場の論理では応じきれない戦時需要や産業再構築に対応するため、国家が産業構造を方向づける「ファシスト経済体制」であり、中国の国家資本主義モデルにも通じると分析している。

また暗号資産にとっての強気材料として、ビットコイン(BTC)が供給上限を持つ一方で、法定通貨の発行は今後も拡大を続ける点を挙げている。この構造的ギャップがビットコインの価値上昇を促す要因になるという。

さらに、暗号資産市場の拡大は、米ドルにペッグされたステーブルコインへの資金流入を加速させ、これらの発行体が保有資産(AUC)を短期米国債(T-bill)に投資することで、間接的に米国の債務ファイナンスを支えていると指摘した。

トランプ政権の政策についても言及し、約8.7兆ドル(約1,274兆円)の資産を抱える退職年金制度「401(k)」における暗号資産投資の容認や、キャピタルゲイン課税の撤廃構想を紹介。こうした政策は、暗号資産市場にとって追い風になると見ている。

加えて、ヘイズ氏は中国のケースと対比し、同国がかつて住宅バブルを利用して信用創造の副作用を吸収したように、米国は暗号資産を民衆参加型のバブルとして活用する可能性が高いと指摘。構造的に異なるこのバブルの仕組みが、今後の市場成長を後押しすると予測している。

ブログの締めくくりとして、ヘイズ氏は「ETHの次なる上昇相場は、市場に新たな穴を開けるだろう」と述べ、かつてFTX破綻後にソラナ(SOL)が7ドルから280ドルに急騰したような動きが、今度はイーサリアムに訪れると示唆した。ここ3年ほどETHは「最も嫌われた大型暗号資産」だったが、今や欧米の機関投資家からの支持を集めつつあると評価している。

同氏が最高投資責任者(CIO)を務めるファミリーオフィス「ミールストーム(Maelstrom)」では、イーサリアムをはじめ、ERC-20系シットコインやDeFi(分散型金融)関連銘柄にフルインベストしていると明かし、2025年年末価格予想として、ビットコインが250,000ドル(約3,658万円)、イーサリアムが10,000ドル(約146万円)に達するとしている。

参考:ブログ
画像:iStock/evhenii-Podshyvalov

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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