CZは名誉毀損で提訴の姿勢も
「ブルームバーグ(Bloomberg)」が関係者の話として報じた、海外大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)が米ドル建てステーブルコイン「World Liberty Financial USD(USD1)」のコード作成を支援したとする報道が波紋を呼んでいる。
「USD1」は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領一族が経営に関与し、暗号資産(仮想通貨)事業を手がけるワールド・リバティー・ファイナンシャル(World Liberty Financial:WLFI)発行のステーブルコインだ。
「ブルームバーグ」は7月11日、バイナンスが「USD1」のスマートコントラクト作成やプロモーション支援を行い、さらに関連する大型取引の実行にも関与していたと報じた。
WLFIは、バイナンス及びアブダビ拠点の投資会社「MGX」と提携関係を結んでおり、MGXは今年3月、バイナンスに対して総額20億ドル(約2,871億円)の投資を実行すると発表。この取引には「USD1」が用いられたとされている。
WLFIの共同創設者であるエリック・トランプ(Eric Trump)氏は5月、同社がこの取引において「USD1」を使用して投資の決済を行うと発表。
「ブルームバーグ」によると、発行済みの「USD1」の90%が7月11日時点でバイナンスのウォレットに残っており、トランプ一族には数千万ドルの利息収入が見込まれるという。
バイナンスの創業者で前CEOのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏は、7月11日のXにてこの報道内容に強く反論した。
CZ氏は、「4。FUDだ。ブルームバーグがまた、事実誤認の多い記事を書いた(競合他社がスポンサーだ)。名誉毀損でもう一度訴えなければならないかもしれない」と述べ、事実関係を全面的に否定している。
なおCZ氏は過去にもブルームバーグを名誉毀損で提訴しており、2022年7月には、ブルームバーグビジネスウィークの中国語版を発行する「モダン・メディア・カンパニー(Modern Media Company Ltd)」に対し、同誌に掲載された「CZ’s Ponzi Scheme(CZのポンジ・スキーム)」と題する記事について、名誉毀損で提訴した。
その後、「モダン・メディア・カンパニー」は当該号の流通を停止し、見出しの訂正および謝罪を行ったことで、訴訟は解決に至っている。
コインベースは「報道に関与していない」と明言
今回の報道を受けて、一部オンライン上では「バイナンスが米国市場に復帰することで、米取引所コインベース(Coinbase)のシェアが奪われるのを恐れたコインベース側のリークだという証拠を掴んだ」といった憶測も拡散された。
これに対し、コインベースのCLO(最高法務責任者)ポール・グレワル(Paul Grewal)氏は7月14日、自身のXで、「これはまったくの誤報です。私たちはこの記事に一切関与していませんし、競合を攻撃することはありません。クリプトのパイを拡大するという私たちの目標を共有するビジネスを歓迎します」と明確に否定したうえで、「事実のソースを引き続き探してください」とコメントしている。
また、「ブルームバーグ」は報道の中で、CZ氏が2024年末に服役を終えた後、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領に対して恩赦を求めていたことにも言及している。
実際、CZ氏はXの投稿で「銀行秘密法(BSA)違反のみで服役したのは米国史上自分だけだ。恩赦を望まないわけがない」と述べており、恩赦の可能性を排除しない姿勢を示していた。
参考:ブルームバーグ報道
画像:Reuters