CZがトランプ政権に恩赦を申請
暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)の創業者で前CEOのチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏が、昨年末に刑務所から出所後、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領に恩赦を求めている。CZ氏は、2週間前に正式にトランプ政権へ恩赦申請を行ったことを、5月6日に配信されたポッドキャスト「フローキーラジオ(Farokh Radio)」で明かした。
「恩赦申請を行ったのは、ブルームバーグ(Bloomberg)とウォール・ストリート・ジャーナル(Wall Street Journal)の記事が出た後だった」とCZ氏は語り、両紙が3月に報じた「トランプ氏とのビジネス提携と引き換えに恩赦を得ようとしている」との内容を受けての申請であることを示唆した。「彼らが記事にするのなら、正式に出してしまおうと思った」とも述べた。
当時、CZ氏はウォール・ストリート・ジャーナルによるビジネス交渉の報道を否定したが、恩赦の可能性自体を否定はしなかった。「犯罪歴のある人間で、特にBSA(銀行秘密法)違反一件のみで刑務所に入った米国史上唯一の人間が恩赦を望まないはずがない」と、CZ氏は自身のXで述べている。
なおBSAとは、金融機関に対しマネーロンダリング防止のため政府への協力を義務づける「銀行秘密法(Bank Secrecy Act)」を指す。
CZ氏による恩赦申請はまた、トランプ大統領の息子であるエリック・トランプ(Eric Trump)氏が先週発表した声明とも時期的に重なる。この声明では、同氏の家族が運営する暗号資産企業ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial:WLF)が、バイナンスおよびアラブ首長国連邦(UAE)拠点のベンチャー企業MGXとジョイントベンチャーを結成したとされている。
この提携により、MGXはWLFが発行するステーブルコインを活用し、バイナンスに対して20億ドル(約2,871億8,000万円)を投資する計画となっている。取引の詳細は明らかにされていないが、フォーチュン(Fortune)誌の推計によれば、WLFは基礎資産の利回りを通じて年間最大8,000万ドル(約114億8,700万円)の利益を得る可能性があるという。
2023年、CZ氏はバイナンスにおけるマネーロンダリング対策の不備を認め、CEO職を辞任。バイナンスも同様の容疑を認め、総額40億ドル(約5,743億6,000万円)を超える罰金の支払いを命じられた。この訴訟の結果、CZ氏は禁錮4カ月の判決を受け、同年4月から9月にかけて服役した。
仮にトランプ大統領がCZ氏に恩赦を与えたとしても、それが初めての恩赦行使ではない。トランプ氏は、政権発足後わずか100日間で数百人に恩赦を与えており、その中には複数の暗号資産関連の犯罪者や、連邦議会議事堂を襲撃した2021年1月6日の暴徒も含まれている。
トランプ氏は就任初期に、ダークウェブ上の違法薬物取引サイト「シルクロード(Silk Road)」の運営者ロス・ウルブリヒト(Ross Ulbricht)氏に対し終身刑を打ち切る恩赦を与え、12年の服役後に釈放した。さらに、暗号資産取引所ビットメックス(BitMEX)の創業者3人と別の幹部1人にも恩赦を与え、マネーロンダリング関連法違反で有罪判決を受けていた彼らの保護観察処分を解除した。
トランプ政権の2期目についてどう思うかと問われたCZ氏は「この人物は、我々の業界にとって、そして何らかの犯罪歴を持つ人々にとっても良き存在だと思う」と話した。
※この記事は「あたらしい経済」がロイター経由でフォーチュンからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Binance founder “CZ” seeks pardon from President Trump after four month stint in prison
(Reporting By Catherine McGrath)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters