アービトラムが最新アップグレード「Callisto」を実施
アービトラム(Arbitrum)のレイヤー2ネットワーク「アービトラムワン(Arbitrum One)」と「アービトラムノヴァ(Arbitrum Nova)」が、ArbOS Version 40「カリスト(Callisto)」へのアップグレードを6月17日に実施したことを発表した。このアップグレードは、イーサリアム(Ethereum)が5月7日に実装した大型アップグレード「ペクトラ(Pectra)」の主要機能をアービトラムに統合するものだ。
「カリスト」では、外部所有アカウント(EOA:Externally Owned Accounts)がスマートコントラクトコードを直接実行できるようになるEIP-7702や、BLS12-381楕円曲線上での暗号化操作を効率的に実行するプリコンパイルを追加するEIP-2537などが実装された。これらの機能により、「ペクトラ」で実装されたイーサリアムの最新機能と同等の機能を提供できるようになる。
EIP-7702の実装により、EOAは自身のアドレスで実行可能なコードを設定できるようになり、事実上アカウント抽象化(AA:Account Abstraction)機能が追加される。これにより、委任(delegation)、バッチ処理(batching)、トランザクションスポンサーシップ、サブキー権限制御などの機能が実装可能になる。
EIP-2537で実装された、BLS12-381曲線上での暗号化操作を行うプリコンパイルコントラクトは、BLS署名の検証やzkSNARKs、ランダム性、ベクターコミットメントなどの高度な暗号化機能が効率的に利用できるようになり、特にゼロ知識証明(Zero-Knowledge)のユースケースが大幅に強化されるという。
またEIP-2935により、約27時間分のL2ブロックハッシュをステート内に保存できるようになり、履歴データの取得がより信頼性が高く効率的になる。これにより、トラストレスなメッセージング、オラクル同期、L2ステートレスクライアントなどの機能が改善される。
さらに今回のアップグレードには、アービトラムの独自プログラミング環境「スタイラス(Stylus)」のVMキャッシング機能の軽微な修正も含まれている。この修正により、存在しないコントラクトのキャッシュルックアップ処理が改善され、Rustを使用する開発者のワークフローがより円滑になる。
なおペクトラアップグレードに含まれていた一部のEIPは、アービトラムのアーキテクチャとの互換性の問題から今回のアップグレードには含まれていない。これには、イーサリアムビーコンチェーンに関連するコンセンサスレイヤーのEIPや、アービトラムが独自のブロブスケジュールを実装していないためのEIP-7840などが含まれる。
同アップグレードは、独立した第三者機関であるトレイルオブビッツ(Trail of Bits)による監査を完了しており、安全性が確認されている。
ArbOS 40 “Callisto” is now live on Arbitrum One and Nova!
— Arbitrum Developers (@ArbitrumDevs) June 18, 2025
This upgrade brings new capabilities from @Ethereum’s Pectra hard fork including:
EIP-7702 (Account Abstraction)
EIP-2537 (BLS Precompile)
EIP-2935 (Block Hash Access)
And a minor Stylus fix for devs
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参考:ガバナンス投票
画像:PIXTA