シンガポール金融管理局、デジタル資産の保管分離義務化へ

デジタル資産の保管分離義務化へ

シンガポール金融管理局(MAS)が、同国のデジタル決済トークン(DPT)サービスプロバイダーに対し、顧客資産を顧客のために信託された保管口座で保管することを義務付ける法案を7月3日公表した。

その法案によれば、DPTサービスプロバイダーは新法下において、顧客資金を会社の資産とは別に保管しなければならなくなる。一方で顧客資金を他の顧客資金と混同することは認められている。しかし、この場合はリスクについても開示しなければならないとのことだ。

またDPTサービスプロバイダーには、もし仮に管理機関が破産に陥った場合に顧客が被る影響や、顧客資産の保護に適用される条件を開示する義務も課せられる。

またDPTサービスプロバイダーは、デジタル資産のカストディ機能独立した事業部門として設けること、もしくは独立した企業で運営ることが必要となる。またDPTサービスプロバイダーへは、顧客資産の適切な記録を保管し、毎日照合を行うことが義務付けられるとのことだ

なお同法案は2023年10月までに発効される予定とのこと。またMASは、PS規制の最終改正が公表される日の前後に、顧客資産の分離保管及びカストディ要件に関するさらなる要項を定めたガイドラインを公表する予定だと伝えている。

投資家保護に注力するMAS

今回MASが公表した法案は、顧客資産の適切な保管や破産した場合の顧客保護を目的とするものだ。実際、昨年起きた大手暗号資産取引所FTXの倒産劇では顧客資金を不正に流用していたことなどが明らかとなっており、投資家心理を悪化させるものであった。

昨年1月にMASは、暗号資産取引業者に対して広告活動を制限する規制を導入している。これにより、暗号資産取引業者は自社ウェブサイト、アプリ、SNSアカウント以外を使って宣伝することができなくなった。また、この影響でシンガポール国内の暗号資産を扱うATMも閉鎖されることとなった。

またMASは昨年10月、暗号資産取引業者への規制強化案を含む協議報告書を公開。同報告書には、昨年5月に起きた、ステーブルコインUSTの価格崩壊を起因とするレンディングプラットフォームやヘッジファンドの相次ぐ破産を受け、個人投資家の保護に主眼を置いた規制強化案が盛り込まれていた。

はじめてのビットコインはメルカリで

関連ニュース

参考:シンガポール金融管理局
デザイン:一本寿和
images:iStoks/efired

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

カルシ、米国向けにセイネイティブの「SEI」と「USDC」入出金に対応

米予測市場プラットフォームのカルシ(Kalshi)で、レイヤー1ブロックチェーン「セイ(Sei)」のネイティブトークンSEIおよび同ネットワーク上の米ドル建てステーブルコインUSDCの入出金が可能になり、同資産を用いたイベント契約取引の資金移動ができるようになった。Xより12月3日に発表されている

シタデル・セキュリティーズ、トークン化証券とDeFiに取引所・証券会社規制の適用を提言。業界側から反発の声も

米大手マーケットメイカーのシタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)が、トークン化された米国株式を取り扱うDeFi(分散型金融)プロトコルに対しても、取引所およびブローカー・ディーラーとしての規制を適用すべきだとする意見書を米証券取引委員会(SEC)に12月2日に提出した