Visaとマスター、暗号資産企業との新規提携を一時停止か。報道に対し責任者は否定

マスターカードとVisaが暗号資産企業との新規提携を一時停止か

決済大手の米ビザ(Visa)とマスターカード(Mastercard)が、暗号資産(仮想通貨)関連企業との新規提携の計画を一時停止すると3月1日にロイターが報じた。

その報道によると両社は、市況と規制環境が改善するまで暗号資産関連の商品やサービスの発売を延期するという。

この動きは昨年起きた大手暗号資産取引所FTXやレンディングサービス提供のブロックファイ(BlockFi)の倒産により、暗号資産業界への規制の目が厳しくなったことが影響しているとのことだ。

ただしこの報道に対して、ビザの暗号資産部門の責任者クイ・シェフィールド(Cuy Sheffield)氏は否定をしている。

シェフィールド氏は自身のツイッターにて「私たちは、法定通貨のオン・オフランプを改善し、安全でコンプライアンスに準拠した便利な方法でステーブルコインの支払いを促進できる新製品を構築するための製品ロードマップを前進させるために、引き続き暗号資産関連企業と提携していく」と述べている。

また同氏は「クリプトエコシステムにおける課題と不確実性にかかわらず、パブリックブロックチェーン上で実行される法定通貨に裏打ちされたデジタル通貨が決済エコシステムで重要な役割を果たす可能性があるという私たちの見解は変わっていない」と主張している。

また米コインデスクの報道によるとマスターカードの広報担当者もロイターの報道を否定しているとのこと。引き続き暗号資産に関連する決済ソリューション等をパートナーと協力し、市場へ投入すると語ったとのことだ。

ビザおよびマスターカードは積極的にブロックチェーンおよび暗号資産に関わるプロジェクトを実施している。

ビザは2021年12月、コンセンシス(ConsenSys)と共同でソフトウェアソリューション「ConsenSys Rollups」を開発。また2022年1月には、イーサリアム関連技術開発企業コンセンシス(ConsenSys)と提携し、CBDC(中央銀行デジタル通貨)と既存の金融サービスの接続を簡易化するためのインフラモジュールを開発している。

そして昨年10月にビザはJPモルガンと提携し、JPモルガンのブロックチェーンネットワーク「リンク(Liink)」を活用したクロスボーダー決済の効率化に取り組むことを発表。また昨年12月にはイーサリアムのレイヤー2「スタークネット(StarkNet)」で、自動支払機能をテスト実装している。

そしてマスターカードについては2021年12月、スタートアップ支援プログラム「Mastercard Start Path Crypto(マスターカード・スタート・パス・クリプト)」にて、Ava Labs(アバラボ)をはじめとしたブロックチェーン関連のスタートアップ5社を採択していた。昨年10月には暗号資産関連の新たなプログラム「クリプトソース(Crypto Source)」を発表。このプログラムはマスターカードと提携した金融機関が、顧客に対し暗号資産の売買やデビットカードによる決済サービスなどを提供できるサービスだと説明されている。

関連ニュース

参考:ロイターコインデスク
デザイン:一本寿和

images:iStocks/Atstock-Productions

関連するキーワード

この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

合わせて読みたい記事

カルシ、米国向けにセイネイティブの「SEI」と「USDC」入出金に対応

米予測市場プラットフォームのカルシ(Kalshi)で、レイヤー1ブロックチェーン「セイ(Sei)」のネイティブトークンSEIおよび同ネットワーク上の米ドル建てステーブルコインUSDCの入出金が可能になり、同資産を用いたイベント契約取引の資金移動ができるようになった。Xより12月3日に発表されている

シタデル・セキュリティーズ、トークン化証券とDeFiに取引所・証券会社規制の適用を提言。業界側から反発の声も

米大手マーケットメイカーのシタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)が、トークン化された米国株式を取り扱うDeFi(分散型金融)プロトコルに対しても、取引所およびブローカー・ディーラーとしての規制を適用すべきだとする意見書を米証券取引委員会(SEC)に12月2日に提出した