【独占】流動性も分散化して暗号資産市場のインターバンクを目指す。暗号屋・紫竹佑騎が新サービス「Choja」を語る

「Choja」をローンチした暗号屋代表の紫竹佑騎氏

サイバーエージェントのエンジニアから暗号資産(仮想通貨)取引所の立ち上げと運営を経て、現在も数々のブロックチェーンプロジェクトに関わっている紫竹佑騎氏。そんな紫竹氏が自身の会社である暗号屋から新サービス「Choja」を12月21日にローンチした(「Choja」はこちら/ニュースはこちら。その分散型流動性供給システム/分散型マーケットメイクツール「Choja」とは何か? そしてこのサービスを通じてどんな世界を目指すのかについて語っていただいた。

マーケットメイクの重要性を知る

−今回発表されたChojaは分散型マーケットメイクツールということですが、Chojaを作ろうと思ったきっかけと、そもそもマーケットメイクとは何かについて教えてもらってもいいですか?

Chojaの構想のヒントは、Mr. Exchangeという暗号資産取引所を運営している時からありました。当時取引所を運営するために自分たちでもマーケットメイクをやらなければならなくなったんです。

マーケットメイクは簡単にいうと、お店で商品棚に商品を並べておくみたいなことです。例えば暗号資産を買いたい人が取引所に来ても売り注文が出ていないと買えないし、反対に売りたい人は買い注文がなければ売れない。

極端にいうと一億円で売るという人と、百円で買うという人だけではその取引はいっこうに約定しないわけです。そこにマーケットメーカーが入って、妥当な価格で売り注文と買い注文を入れることで、他の人が売買できるようになるわけです。

そのやり方をすごく簡単に説明すると、例えば日本円とビットコインのペアで取引する場合は、まず日本円とビットコインの両方の資産を持っておくわけです。

そして日本円でその時のビットコインの価格よりも少し高い値段で売る、それと同時にその時のビットコインの価格より少し安い値段でビットコインを買う、ということをします。

そうすることでビットコインの価格が上ろうが、下がろうが、価格が一定のレンジで上下すれば、少し安く買って少し高く売るという両方の注文が成立することで都度利益を出し、全体的に資産を増やしていくという仕組みです。

その増えた資産がマーケットメイカーの利益となります。

この様なマーケットメイカーがいることで、取引所でみんなが売ったり買ったりできる流動性が生まれます。

そして当然ですが、マーケットメイクするにはかなりの量の資産と、価格の上下にわせて瞬時にたくさんのトレードをする必要があります。

Mr. Exchangeをやっていた頃は、内部でのマーケットメイクBotを自作していました。当時このBotの成績がすごく良くて、それを使いたいという人たちがたくさん出てきたんですよ。

それでマーケットメイクBotを簡単に貸し出せるシステムを作ろうかとも思ったんですが、そう言った貸し出すだけのサービスは世界中にたくさんあって、それだけだと面白くないなとも感じていたんです。

Uniswapが証明した分散型での流動性供給のメリット

そんなことを考えながらChojaの開発を進めている時に、ちょうどユニスワップ(Uniswap)が流行り出したんです。それが僕の中でヒントになりました。ユニスワップには「買う」と「売る」と「流動性供給」という3つの機能があるんですが、特に「流動性供給」という仕組みを導入する事で物凄く取引高を増やしていたんです。

そしていろんな取引所やトークンプロジェクトが、自身のトークンの流動性を作るためにどんどん参入していき、一時はユニスワップでの取引高が取引所の中で世界2位まで上がっていきました。

第三者のマーケットメイク業者にコストをかけて依頼しマーケットメイクしてもらうよりも、そのトークンを持っている人たちみんなで、そのコミュニティの中で流動性供給する方がしっかり価格が安定する。それを見せてくれたのがユニスワップの分散された流動性供給だと思うんですよ。

あらゆるトークンプロジェクトが、DEX(Decentralized exchange/分散型取引所)で自分たちのトークンの流動性をしっかり作って、みんなに使ってもらおうという動きをとったことで、しっかりと暗号資産トークンエコノミー市場がベースアップされたと思っています。

そしてたまたま、というか僕らの方が先にMr. Exchangeの頃から作っていたんですけど(笑)、Chojaとユニスワップのマーケットメイクのロジックの基礎の部分が一緒だったんですよね。

「これ、そのまま使えるじゃん」と思って流動性供給をみんなでやるシステム、つまり「分散型の流動性供給システム」というふうにChojaを位置付けて開発していこうと進めてきました。

−しかしChojaはユニスワップのようなDEXへの流動性供給をするわけではないんですよね?

はい。ユニスワップはDEXですが、このブームがDEXだけで起きてしまっているのはもったいないと思いました。だからこれをCEX(Centralized Exchange/中央集権型取引所)でできるようにしたら、Chojaってすごい価値のあるプロダクトになるんじゃないかと考えたんです。

ChojaはCEX向けに流動性を供給し、さらにCEXを利用する個人投資家のお手伝いをするツールとなっています。

これが実現すれば流動性のないトークンの発行体、そして取引高が少ない取引所への助けにもなります。暗号資産を使ってビジネスをしたい、大きくしたいという人たちに足りていないのは流動性です。僕たちはその手段を提供していきたいと思っています。

個人投資家がマーケットメイクに参加できるメリット

−Chojaによって流動性供給されれば、発行体のトークンの価値を助け、取引所は取引高が増えるわけですね。一方個人投資家がChojaを利用するメリットはなんでしょうか?

一般の個人投資家にとっては、強力なマーケットメイカーツールを簡単に使ってもらえるメリットがあります。今まではメーケットメイクするにはかなりの量のマーケットメイク対象の通貨     と、それと同等の価値の資金     が必要でした。それをChojaのロジックを使ってマーケットメイクすることで     少ない資産からも参加できるようになっています。

使い方としてはChoja対応の取引所でAPIキーを設定画面から取得していただき、そのAPIキーをChojaの設定画面に保存すれば、あとは自分で任意の資産のペアを選ぶとペアトレードが開始される仕組みです。

またその際に注文幅、いわゆるスプレッドを何%にするか設定する必要があります。それの幅だけ価格が動いたらトレードするという、トレードの頻度の設定です。

スプレッドが広いと大きくチャートが動かないと約定しませんが、1回のトレードあたりの収益は大きくなる。狭いとその逆ですね。

ちなみにペアは提携した取引所で取引できるペアであればその範囲で自由に設定ができるようにする予定です。

それらを設定するとあとはその設定通りにChojaがトレードをしてくれます。取引所さん側から見ると「この人APIツール使って取引してるね」と見える感じです。投資家はChojaに資産を預けるわけではなく、自分の資産を取引してもらうツールとしてChojaを使ってもらうイメージですね。

だから当然ですがChojaはユーザーの資産も秘密鍵も預かっているわけでもないので、勝手にChojaがユーザーの資産を引き出したりすることはできません。

またChojaは暗号資産取引で短期で利益を出したいという人よりも、中長期で資産を育てて行きたいという人向けのサービスです。

仮に暗号資産市場がこのまま価格を上下させていきながらどんどんと今より大きくなっていくとすれば、そこにマーケットメーカーとして参加することで中長期でじっくり資産を増やしいくこともできます。そういう投資を考えている方にはメリットのあるツールだと思います。

マーケットメイクのリスク

−マーケットメイクに参加することの投資家さんとしてのリスクは何ですか?

マーケットメイクにリスクがあるのは、その暗号資産の価値が本当になくなってしまった時ですね。価格が急激に下落してBotが動かしっぱなしになると、みんなが売っている暗号資産をどんどん押し付けられていってしまうリスクがあります。

マーケットメイクは価格が上がったり下がったりすることで、長い期間をかけてその取引のスプレッドで利益を出していく仕組みです。ですので価格が上がったり下がったりすればいいんですが、下がったままになってしまうとリスクが発生します。

だからこそ投資家の方はどのアセットを選んでポートフォリオを組むかが重要になってきます。

またChojaの仕組みは現物取引のみを行います。レバレッジ取引はしませんのでそのリスクは所持しているアセットの範囲に止まります。

Chojaが目指すのは暗号資産のインターバンク

−Chojaをどのようにマネタイズしようと考えていますか?

まずは利用いただける個人投資家さんから月額の利用料金を日本円でいただく形になります。

ただ実は、この費用も最終的には無くしていきたいと考えているんです。

Chojaを使う個人投資家の方がどんどん増えていけば、それぞれの投資家さんの資産はもちろん既存のマーケットメーカーや機関投資家に比べれば小さいですが、それが集まることで、強いマーケットメーカーと同じ規模のマーケットメーカーになれると考えています。

そこまでいけば世界中の取引所にChojaの注文がささるようになる。そこまでいけば僕らのデータが集まってくるんですね。そのデータには無茶苦茶価値がある。

これって実は暗号資産市場にはまだない、インターバンクみたいな構造になると思っています。

FX市場だとインターバンクは真ん中にあって、機関投資家等がトレードした最安値の卸値をFX取引所に渡して、そこにスプレッドをつけて、利益をとってもらうっていう構造です。つまりインターバンクという中央集権的なものから、FX市場はできている。

一方暗号資産取引市場はここまでたくさんの取引所がいわば勝手に生まれてきたわけですよね。これはブロックチェーン的でとても良いことだと思いますが、つまり現状はその真ん中で価格を作っている人たちがいない状況なんです。

それをマーケットメイカーとして、世界中の取引所に注文がさせるという状態を作れば、擬似的なインターバンクになるはずだと考えています。そしてここに集まるデータが貴重なものになる。

そのデータを元に機械学習すれば良いマーケットメイクみたいな提案もできますし、トークンプロジェクトだとか取引所に対しても、良いデータを提供できる。そして取引所にはもちろん取引高を提供できる。

そこまでいければいろいろマネタイズはできますし、投資家の方が無料で使えるようにできると思っています。

それがまさに僕らがChojaをやる最終目標なんです。

暗号資産マーケットのマスターピースになりたい

−Chojaを広げて世の中をどのように変えていきたいですか?

僕たちは暗号資産市場全体をしっかり大きくしていくのに絶対に必要な、マスターピースみたいになりたいと思っているんです。

これからの暗号資産市場をしっかり保つためには、Chojaのように流動性供給を分散して、みんなで取引高を増やしていくことが大切だと思います。根本的には分散された市場だからこそ、流動性供給も分散化させる。

Chojaは一般の金融資産取引などでは門外不出だった秘伝のタレみたいなこの機能を、誰でも使えるようにしてしまう、破壊的イノベーションだと自負しています。

実は先日ある既存の金融関係の方にChojaを説明したら、「証券やFXなどは流動性を分散して供給するっていう考え方ってないから、仮想通貨市場って本当に面白い。ブロックチェーンはそういう分散という考え方がしっかり根付いているからできるのかもしれないですね。私たちは流動性供給を一般の人にやってもらうという考え方自体がなくから、目からうろこです」と言っていただけたんです。

流動性も分散化する。民主化する。

そういったところから暗号資産マーケットをより大きくしていきたいと思っています。

ブロックチェーンを使って、プロトコルを使って、お金がどんどんと流れる状況、それって金融ですよね。あたらしい技術を使って、まさに「あたらしい経済」を作っていきたいと思っています。

関連リンク

→Chojaはこちら

→暗号屋はこちら

 

この記事の著者・インタビューイ

紫竹佑騎

合同会社 暗号屋 代表社員
1986年生まれ、新潟出身。2010年新卒入社したサイバーエージェントではエンジニアとして様々なプロジェクトを担当。ソーシャルゲームのプロジェクトマネージャー、フレームワーク開発と育成、ゲーム開発、動画メディア開発を行い 2017 年に退職し独立。福岡で仮想通貨取引所Mr. ExchangeをCTOとして設立し、退職後フリーランス活動を経てブロックチェーン事業に特化した合同会社暗号屋を設立。著書に Web制作者のためのGitHub の教科書。

合同会社 暗号屋 代表社員
1986年生まれ、新潟出身。2010年新卒入社したサイバーエージェントではエンジニアとして様々なプロジェクトを担当。ソーシャルゲームのプロジェクトマネージャー、フレームワーク開発と育成、ゲーム開発、動画メディア開発を行い 2017 年に退職し独立。福岡で仮想通貨取引所Mr. ExchangeをCTOとして設立し、退職後フリーランス活動を経てブロックチェーン事業に特化した合同会社暗号屋を設立。著書に Web制作者のためのGitHub の教科書。

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