JPYCは大口発行の制約を指摘、全銀協は利用者保護を重視
金融庁が開催した「デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会」の第2回会合で、第二種資金移動業者によるステーブルコインの発行に適用される1件100万円の上限規制について11月2日に議論が行われた。同会合では、円建てステーブルコイン「JPYC」を発行するJPYC社が上限の見直しを求める一方、全国銀行協会(Japanese Bankers Association:全銀協)は現行の規制枠組みを維持したまま上限のみを撤廃・緩和することに慎重な姿勢を示した。なお、制度変更が決定したわけではない。
日本では、銀行以外の事業者が送金サービスを提供する資金移動業を、取り扱う金額や規制内容に応じて第一種、第二種、第三種に区分している。このうち第二種資金移動業は登録制で、1件当たり100万円以下の送金を取り扱う。一方、100万円を超える高額送金を扱う第一種資金移動業には、登録に加えて認可が必要となる。第二種の上限は同区分の事業者によるステーブルコインの発行にも適用されるが、ステーブルコインの保有残高を一律に制限するものではない。
JPYC社は第二種資金移動業者として登録を受けており、同社によるJPYCの発行にも1件100万円の上限が適用される。同社は、企業や自治体が複数の利用者に配分する原資をまとめてJPYCに交換する際にも、この上限が適用されることが大口利用の制約となっているとして、見直しを求めた。同社は具体例として、自治体が10万人に5万円ずつ給付金を支給するケースを提示。この場合、必要な原資は50億円となるが、現行の上限ではJPYCの発行を5,000回に分ける必要があるとの試算を示した。
こうした課題を踏まえ、JPYC社は、スマートコントラクトを利用すれば受取人ごとの資金配分や記録を管理できると説明。そのうえで、個々の配分額が100万円以下の場合には、一括発行を個別の支払いの積み上げとして扱うよう求めた。また、国や自治体、銀行、証券会社、本人確認済みの法人などとの取引について、発行上限の撤廃または別枠の設定を要望した。制度の見直しに当たっては、取引監視の強化や資産保全の高頻度化など、追加的な利用者保護措置とあわせて段階的に検討すべきとの考えを示した。
これに対し全銀協は、100万円上限を登録制の第二種と認可制の第一種を区分する重要な基準と位置付けている。第一種には高額送金を前提として、より短い資産保全のサイクルや業務実施計画、滞留管理などの規制が設けられている。そのため全銀協は、第二種の上限のみを緩和することは、取引額に応じて規制を段階化する現行制度と整合しないと指摘した。
全銀協が懸念する理由の一つは、第二種資金移動業者による利用者資金の保全に時間差が生じることだ。現行制度では、1週間以内で定める算定期間ごとに、その期間中の保全必要額の最高額以上を、期間終了後3営業日以内に供託などによって保全する仕組みとなっている。そのため、利用者資金が急増した場合には、増加分に見合う保全が完了するまでに時間差が生じる。全銀協は、土日祝日を挟むと、この期間が暦日で10日を超える可能性があると指摘した。
また全銀協は、事業者が破綻した場合の利用者資金の返還についても、保全とは別の課題を挙げた。従来型の供託制度などを利用する事業者では、破綻後に利用者が資金を受け取るまで最低170日を要する可能性があるとのこと。2025年の法改正では、銀行や信託会社などから利用者へ直接返還する仕組みが設けられたものの、すべての第二種資金移動業者に義務付けられたわけではない。
さらに全銀協は、ステーブルコインなどの電子決済手段が24時間移転できることから、償還請求が短時間に集中する「デジタル・ラン」のリスクを指摘した。これは、多数の利用者が一斉にステーブルコインを法定通貨などに交換しようとすることで、発行者の資金繰りに負担が生じる現象を指す。全銀協は、上限緩和が直ちに金融システム全体のリスクにつながるとは断定していないものの、発行残高や利用規模が拡大した場合には、銀行預金の流出や裏付け資産の売却を通じ、金融市場に影響が及ぶ可能性があると説明した。
マネーロンダリング・テロ資金供与対策(AML/CFT)も、全銀協が挙げた懸念の一つだ。パブリックブロックチェーンでは、ウォレットの実質的な所有者や資金源、取引目的を常に把握できるとは限らない。さらに、分散型取引所(DEX)や異なるブロックチェーン間で資産を移転するブリッジなどを経由した取引では、資金の追跡や不正な取引の把握が難しくなるおそれがあるとのことだ。
【研究会】 11月2日(月)10:00~12:00に開催の、デジタル・分散型金融への対応のあり方等に関する研究会(第2回)の資料を公表しました。#金融庁 ▼資料は以下よりご覧いただけます。 https://t.co/7QyQyeI9JW
— 金融庁 (@fsa_JAPAN) November 2, 2026
参考:資料
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