330万人超のユーザーを抱える決済アプリに導入、今後はトークン化MMFの購入にも対応へ
香港の大手銀行である香港上海銀行(The Hongkong and Shanghai Banking Corporation Limited:HSBC)が、同行初の香港ドル建てステーブルコイン「HSBCレッドコイン(HSBC RedCoin:RCHKD)」の提供を開始したと10月23日に発表した。HSBCの決済アプリ「ペイミー・バイ・HSBC(PayMe by HSBC)」を通じて、個人間送金や加盟店での支払いに利用できる。
ペイミーは330万人以上のユーザーを抱える香港の既存決済アプリだ。HSBCは10月23日の発表で、数日以内にアプリ内のステーブルコインウォレットを有効化できるようになると説明した。具体的には、友人や家族への即時送金に加え、ペイミーに対応する10万以上の加盟店でレッドコインによる直接支払いが可能になるとのこと。
レッドコインは、香港金融管理局(Hong Kong Monetary Authority:HKMA)のライセンスに基づいて発行されるステーブルコインだ。HSBCは、発行するステーブルコインについて、高品質かつ流動性の高い準備資産で常時全額裏付ける方針を示している。準備資産とは、ステーブルコインの価値を裏付け、保有者からの償還請求に対応するために発行者が保有する資産のことだ。HSBCは、これらの資産を分別管理された口座で保有する計画を今年4月に公表していた。
香港では2025年8月にステーブルコイン条例(Stablecoins Ordinance)が施行され、法定通貨に価値を連動させたステーブルコインの発行者に対するライセンス制度が導入された。同制度では、準備資産の管理や償還、リスク管理、マネーロンダリング対策などが発行者に求められる。HSBCは今年4月、同制度で最初にライセンスを取得した2事業者のうちの1社となった。なお、同行は香港ドル紙幣の発行を認められた3つの銀行のうちの1行でもある。
トークン化MMFなど投資商品への対応も計画
HSBCは今年後半、香港向けモバイルバンキングアプリ「HSBC HKモバイルバンキングアプリ(HSBC HK Mobile Banking App)」にもステーブルコインウォレット機能を追加する予定だ。また、同アプリではレッドコインを使ってトークン化された投資商品を購入できるようにする計画も示している。対象には、HSBCが運用する香港ドル建てマネーマーケットファンド(MMF)に新設予定の受益権クラスが含まれる。
MMFは、短期の債券や金融商品などを中心に運用する投資信託だ。受益権のトークン化とは、ファンドの持分をデジタルトークンとして表現する仕組みを指す。
さらにHSBCは、レッドコインの用途を企業や機関投資家向けのホールセール取引にも広げる方針を示している。ただし、ホールセール用途の具体的な提供開始時期は明らかにされていない。
HSBCはこれまでも、機関投資家向けのデジタル債券プラットフォーム「HSBCオリオン(HSBC Orion)」や、法人向けのトークン化預金サービス、個人向けの金トークン「HSBCゴールドトークン(HSBC Gold Token)」などを提供してきた。また、同行は2022年以降、HKMAが進めるデジタル通貨やトークン化資産に関する実証事業にも参加している。