既存チェーンに資産を保持したまま取引時の個人情報を秘匿、ステージネットで実装
プライバシー保護に特化したブロックチェーン「ミッドナイト(Midnight)」の公式ブログより、複数のブロックチェーンで取引時の個人情報を秘匿する機能「ナイトモード(Nightmode)」の仕組みや用途が10月20日に公開された。
同機能はシグ・ネットワーク(Sig Network)と共同で開発されたもので、既存のブロックチェーンに資産を保持したまま、ウォレットの識別情報や残高を非公開にして金融サービスを利用できるようにする。現在、公開デモではミッドナイトのステージネットとイーサリアム(Ethereum)のテストネットが接続されている。今後は他のブロックチェーンへの展開も予定されている。
ミッドナイトは、カルダノ(Cardano)の開発企業インプット・アウトプット(Input Output)などが開発に関わるブロックチェーンだ。一般的なパブリックブロックチェーンでは、取引履歴やウォレット残高などの情報が公開されている。そのため、企業の給与支払いや資金移動などから、給与体系や事業戦略が第三者に知られる可能性がある。ミッドナイトは、こうした情報の公開が金融取引におけるプライバシーやセキュリティ上の課題になっていると説明している。
ただし、ナイトモードは取引に関するすべての情報を非公開にするわけではない。例えば、分散型取引所(DEX)のユニスワップ(Uniswap)で取引する場合、取引内容や金額は公開される一方、取引とユーザーの識別情報が結び付かないよう設計されている。
こうしたプライバシー保護には、複数の参加者が秘密鍵を分散管理し、共同で署名を行う「マルチパーティ計算(Multi-Party Computation:MPC)」を利用した保管庫「MPCボールト」が使われる。具体的には、ユーザーが元のチェーンにあるMPCボールトへ資産を預けると、その資産に対応する残高が、ミッドナイト上の「マルチチェーン・シールド(Multi-Chain Shielded:MCS)」プールに非公開で記録される。ユーザーはこの残高を利用して、取引やステーキングなどを行える。取引時には、MCSプールが注文を対象のアプリケーションへ送信する。一方、ユーザーが元の資産を引き出す際には、ミッドナイト上の対応するトークン残高をバーン(焼却)し、預け入れていた資産を元のチェーンで受け取る。
さらに、ナイトモードはゼロ知識証明を利用した「選択的開示(Selective Disclosure)」にも対応する。ゼロ知識証明とは、情報の詳細を明かさずに、特定の条件を満たしていることを証明する技術だ。 この技術により、ユーザーは個人情報や取引の詳細を一般公開せずに、権限を与えられた監査担当者などに取引の有効性を証明できる。
想定される用途には、利用者の識別情報を秘匿したDEX取引、機密性を保った融資、リキッドステーキング、機関向け決済、現実資産(RWA)の決済などがある。具体的には、アーベ(Aave)などのレンディングサービスで借り手の識別情報を保護する用途や、ライド(Lido)のリキッドステーキング資産を秘匿残高として保有する用途が挙げられている。リキッドステーキングとは、暗号資産をステーキングしながら、その資産に対応するトークンを別の用途にも利用できる仕組みだ。
なおシグ・ネットワークによると、ステージネットではイーサリアムからの入金、ユニスワップでの交換、アーベへの資産供給、引き出しに対応しているとのこと。メインネットへの対応は今後の予定で、同社は2026年12月にトロンへ対応する計画も示している。一方、ミッドナイトの公式ロードマップでは、2026年第4四半期にEVM互換チェーンへの対応、2027年第1四半期に追加チェーンへの展開を予定している。
これに関連し、カルダノ創設者のチャールズ・ホスキンソン(Charles Hoskinson)氏は10月21日、トロン創設者のジャスティン・サン(Justin Sun)氏に向けて「トロン、ミッドナイトへようこそ」とXに投稿した。
1/ Introducing Nightmode 🌑 What if you could access onchain finance without putting your entire financial life on display? Built with @Sig_Network, Nightmode extends Midnight’s shielded privacy and selective disclosure to public chains like Bitcoin, Ethereum, Solana, Tron and more. Using MPC vaults, Nightmode aims to bring privacy to the assets and applications people already use, without requiring them to leave their existing ecosystems. See how it works 👇
— Midnight (@MidnightNtwrk) October 20, 2026
Welcome to Midnight, Tron @justinsuntron
— Charles Hoskinson (@IOHK_Charles) October 21, 2026
参考:ミッドナイト
画像:PIXTA