Nyxとコノエインテリジェンスが業務提携、「Mythos対策」本格始動

AIが大量生成する脆弱性レポートの検証から修正まで自動化へ

イーサリアム(Ethereum)に特化した日本の私設研究機関であるニックス・ファウンデーション(Nyx Foundation:以下、Nyx)が7月29日、AIセーフティ・セキュリティスタートアップのコノエ・インテリジェンス(Konoe Intelligence)との業務提携契約の締結を発表した。両社は、AI時代の新たなセキュリティ課題への対応を目的に、「ミュトス(Mythos)対策」と呼ぶ取り組みを開始する。

両社が解決を目指すのは、AIが大量に報告する脆弱性候補を人間だけでは処理しきれなくなるという課題だ。AIによって脆弱性を発見する効率は大きく向上している。一方、それぞれが本当に危険なのかを確認し、優先順位を付けて修正する作業は、依然として人手に依存している。そのため、脆弱性を見つけることよりも、その真偽を見極めることが新たなボトルネックになりつつあるとのことだ。

こうした変化を象徴する例としてNyxは、完全自律型AIペネトレーションテスター「XBOW」を挙げている。AIペネトレーションテスターとは、攻撃者の視点でシステムを検査し、脆弱性を発見するAIだ。XBOWは2025年、バグ報奨金プラットフォーム「ハッカーワン(HackerOne)」の米国ランキングで、AIとして初めて首位となった。約1,060件の脆弱性レポートを提出し、直近90日間だけでも54件が「クリティカル(Critical)」、242件が「ハイ(High)」としてプログラム運営者によって分類されたという。

一方、防御側ではAIが生成した脆弱性レポートが大量に届くようになり、その一つひとつが本当に脆弱性なのか、誤検知なのかを人手だけで確認することが難しくなっている。Nyxは、この構造を「ミュトス問題」と呼んでいる。

今回の提携は、このミュトス問題への対応を目的としている。Nyxは、この課題を解決するため、独自開発した「SPECA(Specification-to-Checklist Agentic Auditing)」を中核技術として活用し、脆弱性レポートの検証自動化を目指す。

なおSPECAは、AIが見つけた脆弱性が本当に成立するのかを機械的に確認するための技術だ。Nyxによると、システムが本来満たすべき仕様から検証用チェックリストを生成する。その内容と実際のプログラムを照らし合わせることで、脆弱性レポートの妥当性を確認するとのことだ。

Nyxが公表した論文によると、SPECAはブロックチェーンだけでなく、C/C++で開発されたオープンソースソフトウェア(OSS)でも既知の脆弱性を検出したというRepoAuditのC/C++ベンチマークでは、15のプロジェクトに含まれる既知バグ35件をすべて検出。Sonnet 4.5使用時に、従来手法の最高値に並ぶ適合率(検出結果のうち正しかったものの割合)88.9%を記録したとのこと。さらにNyxによると、イーサリアム財団(Ethereum Foundation)の研究グラントを受領し、同財団のセキュリティ運用への統合に向け、AI生成レポートの自動検証や自動パッチ適用の仕組みづくりを進めているという。

一方、コノエ・インテリジェンスは、攻撃者が実際にどのような手法でシステムを狙うのかという知見を提供する役割を担う。同社は、AIシステムに対し、攻撃者の視点で疑似攻撃を行い、安全性を評価する「AIレッドチーミング」を手掛けている。

コノエ・インテリジェンスは旧社名のアラジン・セキュリティ(Aladdin Security)時代に、オープンAI(OpenAI)主催の「レッド・チーミング・チャレンジ(Red-Teaming Challenge)- OpenAI gpt-oss-20b」で上位20に入賞した実績を持つ。同社によると、同コンテストでは大規模言語モデル(LLM)へのプロンプトインジェクションを成功させたという。プロンプトインジェクションとは、AIへの指示に悪意ある入力を紛れ込ませ、想定外の応答や動作を引き起こす攻撃手法だ。

今回の提携では、Nyxが持つ仕様駆動の脆弱性検証技術と、コノエ・インテリジェンスが持つAIレッドチーミングの知見を組み合わせることで、脆弱性レポートの検証から修正までの自動化を目指す。まずはソースコードの脆弱性検出・検証から取り組みを開始し、金融を中心とした基幹システムを持つ企業向けに提供を進める方針とのことだ。

また両社は、本提携で構築するミュトス対策の枠組みを、OSS開発者やブロックチェーン開発者、監査者にも広げていく考えを示した。日本全体のセキュリティ水準向上への貢献を目指すとのことだ。

参考:プレスリリース
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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