英中銀がステーブルコイン規制を緩和、保有上限見送りで発行総額上限方式へ

業界からは歓迎と懸念の声

英中央銀行のイングランド銀行(BoE)が、英ポンド建てシステミック・ステーブルコイン発行体の規制に関する政策声明および実務規範(コード・オブ・プラクティス)草案を6月22日に公表した。昨年11月に公表した協議案から複数の要件を緩和しており、同実務規範について2026年末までの最終化を目指す。

今回公表された政策声明における大きな変更点は、個人および企業ごとの保有上限(キャップ)を設けない方針に転じたことだ。BoEは代わりに、各ステーブルコインの発行総額に対する上限、いわゆる「一時的な発行ガードレール」を設けるアプローチを採用した。

このガードレールは、初期段階において1つのシステミック・ステーブルコイン商品あたり400億ポンド(約8.5兆円)に設定される。新たな形態の通貨に金融システムが適応していく移行期において、家計や企業への信用供給に与える影響を抑えながら、段階的な拡大を認める設計だ。

準備資産の構成要件も緩和された。昨年11月の協議案では、準備資産の40%を無利子のBoE預金、60%を短期国債とする案が示されていたが、今回の方針ではBoE預金を30%、残り70%を残存期間6カ月以内の短期英国債とする内容に修正された。

BoEはこの見直しについて、業界から寄せられた意見を踏まえ、発行体のビジネスモデルの持続可能性を支援するものだと説明している。また同中銀は、見直し後の要件について、銀行セクターで歴史的に観察されてきた流動性リスクや規制要件により近いものだとしている。

さらにBoEは、システミック・ステーブルコイン発行体向けに、中央銀行流動性ファシリティ(Central Bank Liquidity Facility:CBLF)を導入する方針も確認した。これはポンド建てステーブルコインに対する信頼を強化するためのバックストップとして機能するもので、市場ストレス時における流動性支援の枠組みとなる。同ファシリティの設計や運用条件の詳細は2027年に公表される予定だ。

一方で、業界からは今回の緩和を評価しつつも、なお懸念の声が上がっている。分散型金融(DeFi)プロトコルAaveの創業者スタニ・クレチョフ(Stani Kulechov)氏は、今回の枠組みは依然として制約が強いと指摘。準備金の30%を無利子の中央銀行口座に置く要件は発行体の収益性を損ない、企業をオフショアに追いやる可能性があるとの見方を示した。また同氏は、この規則のままでは英国が米国との競争で苦戦する可能性があるとも警告している。

BoEは今後、金融行動監視機構(FCA)とともに、共同規制アプローチに関する文書を公表し、英国におけるステーブルコイン規制の枠組みがどのように統合的に機能するかを示す予定だ。また2027年の制度運用開始に向け、システミック・ステーブルコイン発行体向けの追加資料やガイダンスも順次公表していく方針である。

参考:発表
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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