ZKsync装うトークンで資金詐取か
合成麻薬「フェンタニル」の前駆体(製造に必要な原料化学物質)を米国へ不正輸出していたとされる中国系組織が、日本の拠点を通じて大規模な暗号資産(仮想通貨)詐欺に関与していた疑いがある。「日本経済新聞」が6月22日に報じた。
日経の独自調査によると、同組織は「.jp」ドメインを使い、偽トークンを発行・流通させ、暗号資産ユーザーを対象に資金を送金させていた疑いがあるとのこと。問題となっているのは「zksync.jp」と称するトークンで、イーサリアム(Ethereum)のレイヤー2ネットワーク「ジーケーシンク(ZKsync)」を装ったものとみられる。正規のZKsyncプロジェクトとは無関係だ。組織は計4598万枚を発行し、その一部を日本含む世界中の不特定多数へ送信。その後に偽サイトへ誘導しユーザーから暗号資産を抜き取ったとのこと。
また米国の制裁対象となっている組織との活発な取引を示す証拠も見つかっているとのことで、日経は、この詐欺による被害額が、日本を含む世界の被害者全体で数億円規模に上る可能性を伝えている。
日本での金融犯罪への関与が疑われる中核組織は、中国湖北省武漢の化学品メーカー「湖北アマーベル・バイオテック(Hubei Amarvel Biotech)」とのこと。同社幹部のワン・チンジョウ(Qingzhou Wang)氏とチェン・イーイー(Yiyi Chen)氏は、フェンタニル前駆体の米国への輸入共謀および資金洗浄の罪で2025年2月に有罪評決を受けたと、米司法省が昨年9月19日に発表している。両氏はそれぞれ禁錮25年と15年を言い渡された。
日経と国際調査報道機関ベリングキャット(Bellingcat)が2025年8月7日に公開した共同調査報告では、湖北アマーベル・バイオテックと、日本の名古屋に登記されていた「フィルスキ(FIRSKY)株式会社」の関係が指摘されている。同調査によると、フィルスキは2021年に日本で設立され、2024年7月に清算された。また、両社は同じ国際的な密輸ネットワークの一部で、実質的に同一の組織だった可能性があるという。
米麻薬取締局(DEA)の高官は5月下旬、日本がフェンタニル密輸の中継地点とみなされていることを示唆した。日経は、フィルスキが「日本のボス」と呼ばれる人物の下で物流や資金管理を担う運営拠点として機能していたと伝えており、日本拠点が薬物密輸に加え、金融詐欺を含むさまざまな違法活動に使われていた可能性を指摘している。
今回日経は、裁判証拠をもとに、アマーベルを中心とする同組織が使用していた4つの暗号資産口座アドレスを特定したという。その結果、アマーベルが中国系金融詐欺グループに関連するアドレスと暗号資産取引を繰り返していたことや、米財務省外国資産管理局(OFAC)の制裁対象となっている中国の組織や個人との関連を確認したとのこと。特に、中国の化学品グループ「武漢遠成集団(Wuhan Yuancheng Group)」を中心とするOFAC制裁対象との取引は120件超に上ったとのことだ。
なお暗号資産詐欺をめぐっては、ブロックチェーン分析企業チェイナリシス(Chainalysis)が1月に公開した「2026 Crypto Crime Report」によると、2025年に暗号資産詐欺・不正による被害額は推計で170億ドルに上る可能性があると報告されている。同レポートでは、なりすまし詐欺が前年比1,400%増加し、AIを使った詐欺は従来型の詐欺より4.5倍収益性が高かったとされる。
※2026.6.22 18:26 見出しおよび本文に一部表現に誤りがありましたので修正しました。
参考:日経新聞①・日経新聞②・日経Asia・米司法省・ベリングキャット・チェイナリシス
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