アーベが復旧計画を発表
レンディングプロトコルのアーベ(Aave)が、「rsETH」の裏付け回復に向けた技術実装計画を、4月28日に公式Xアカウントで発表した。同計画は、アーベが主導する業界連合「ディファイ・ユナイテッド(DeFi United)」による復旧対応の一環だ。
今回の計画は、4月18日に発生したケルプDAO(KelpDAO)が発行するリキッドリステーキングトークンrsETHを巡る不正流出事案への対応として示されたものだ。同事案では、クロスチェーンブリッジプロトコル「レイヤーゼロ(LayerZero)」における不正なメッセージ処理により、裏付けのない約116,500rsETHがイーサリアム(Ethereum)側で払い出されたという。
その後、攻撃者は取得したrsETHの一部を担保として、アーベやコンパウンド(Compound)などの複数のレンディングプロトコルで資産の借り入れを行ったとみられている。この結果、実質的な裏付けを持たない資産が担保として利用される状態となり、レンディング市場に不良債権リスクが生じている。
また同事案では、4月21日にアービトラム(Arbitrum)上で攻撃者関連とみられるアカウントに保管されていた約30,700ETHが、同ネットワークのセキュリティ評議会の判断により凍結された。
この資産を差し引いた後の不足額については、攻撃者による借入額を基準とした初期試算では約68,900ETH規模とされていた。一方、今回アーベ(Aave)の「ARFC(ARFC: rsETH Incident Funding Update)」によると、回収見込み分などを織り込んだ残余ギャップを約75,081ETHと整理している。
この差異については、rsETHがステーキング報酬を反映する仕組みを持ち、1トークンあたりの価値が1ETHを上回ることから、裏付け不足をETH換算した場合に単純な借入額よりも大きく算出されるためとみられる。また、同提案では、ブリッジを安全に再開するために必要な裏付け資産の総額について、約120,015ETH規模になるとの見方も示されている。
こうした不足の解消に向け、アーベのサービスプロバイダーなどが主導し、複数の分散型金融(DeFi)プロトコルや関係者が連携する復旧枠組みとしてディファイ・ユナイテッドが形成された。
アーベは今回の発表で、「rsETHの裏付け回復」と「影響ポジションの整理」を柱とする具体的な実装計画を示している。
まず裏付け回復については、確保したイーサリアム(ETH)を段階的にrsETHへ変換し、ブリッジのロックボックスに預け入れることで実施する。これによりrsETHは本来の交換比率に基づく裏付けを回復し、ブリッジ機能の再開が可能になる。
あわせて、アーベは影響ポジションの整理も進める。アーベのイーサリアムおよびアービトラム市場において、rsETHのオラクル価格を一時的に調整したうえで清算を実施し、担保として残存する資産の回収を行う。
アーベでは約13,000ETH相当、コンパウンド(Compound)では約16,776ETH相当の資金回収が見込まれている。これらは影響ポジションの清算を通じて回収される見込みで、回収されたrsETHは償還プロセスを通じてETHに変換され、不足分の補填に充てられる。
これらの処理は並行して実行される。最終的には凍結されているrsETHおよびETHの機能再開や、担保率(LTV)の設定復旧が行われる見込みだ。
DeFi Unitedの支援が拡大
今回の発表に至るまでには、インシデント発生後、複数のプロトコルや関係者による資金拠出の動きが広がっていた。ライド(Lido)のDAOであるライドDAO(Lido DAO)は最大2,500stETHの拠出を提案しているほか、イーサファイ(ether.fi)は最大5,000ETHの拠出提案を進めている。
さらに、アーベの創業者スタニ・クレチョフ(Stani Kulechov)氏が個人として5,000ETHの拠出を表明しているほか、アーベDAO(Aave DAO)でも最大25,000ETH規模の資金拠出が検討されている。ゴーレム財団(Golem Foundation)は1,000ETHの拠出を発表している。また、エセナ(Ethena)、インク財団(Ink Foundation)、タイドロ(Tydr0)などもXアカウントを通じて参加を表明していた。マントル(Mantle)は最大30,000ETH規模のクレジットライン提供を提案している。
その後の展開として、コンセンシス(Consensys)および同社創業者ジョセフ・ルービン(Joseph Lubin)氏が最大30,000ETHのコミットメントを表明しているほか、レイヤーゼロ(LayerZero)は5,000ETHの拠出と5,000ETH規模の流動性供給を行う方針を示している。
また、ケルプDAOも2,000ETHの拠出を行っているとされるほか、コンパウンド(Compound)でも最大3,000ETH規模の支援提案が進められている。また、バビロン財団(Babylon Foundation)、サークル(Circle)なども支援を表明している。
公開されているダッシュボードによると、2026年4月30日時点で約137,000ETHの資金が集まっており、理論上はブリッジを安全に再開するために必要な約120,015ETHを補填し得る水準に達している。
一方で、これらの資金にはガバナンス承認や実行プロセスを前提とするものも含まれており、実際の裏付け回復および市場の正常化は今後の手続きに依存するとみられる。
— Aave (@aave) April 28, 2026
Aave service providers have published an Aave DAO governance proposal to contribute 25,000 ETH to the ongoing DeFi United effort.
— Aave (@aave) April 24, 2026
Aave DAO’s ETH contribution would go towards the plan to restore rsETH’s backing to try and normalize market conditions as quickly as possible.
DeFi…
参考:ダッシュボード・ケルプDAO(X)・アーベ(X)・サークル(X)・レイヤーゼロ(X)・コンパウンド(X)・バビロン(X)
画像:PIXTA