米DTCC子会社DTC、SECからノーアクションレター取得。規制下のトークン化サービス検証へ

米証券市場の中核インフラが規制下でトークン化サービス提供へ

米国の金融市場インフラを担うデポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング・コーポレーション(Depository Trust & Clearing Corporation:DTCC)が、子会社であるデポジトリー・トラスト・カンパニー(Depository Trust Company:DTC)について、米証券取引委員会(SEC)の取引市場部門スタッフからノーアクションレターを取得したと12月11日に発表した。これによりDTCは、DTC参加者がDTCで保有する証券に関する「権利(security entitlements)」を、事前承認されたブロックチェーン上でトークンとして扱える形で記録・移転するための新サービス(DTCC Tokenization Services)のパイロット版を、限定的な本番環境で検証できる立場となった。

DTCCは、米国の株式や債券などの証券取引において、清算・決済・保管を担う金融市場インフラだ。証券取引の取引後(ポストトレード)プロセスを集中的に処理しており、米国市場の中核を支える存在とされている。同社の子会社であるDTCは、米国株式やETF、国債などを含む証券の保管・資産管理を担っている。

今回DTCが取得したノーアクションレターは、SECスタッフが、特定条件(限定的なパイロット運用・報告・技術要件など)を前提に、連邦証券法上の一定規則に関して執行措置を推奨しないことを示すものだ。同レターは、DTCがパイロット版の運用を開始した日から3年で失効する。またDTCは開始時にスタッフへ書面通知する必要がある。

同サービスでは、DTC参加者がDTCで保有する一定の適格証券(Subject Securities)に関する権利をトークン化し、登録済みウォレット(Registered Wallet)間で移転できる仕組みを想定している。またDTCは従来市場と同水準のレジリエンス、安全性、健全性を維持した運用を行うとしている。

対象となる資産は、流動性の高い一定の資産に限定される。具体的には時価総額上位1,000社で構成されるラッセル1,000、主要指数に連動するETF(上場投資信託)、および米国財務省短期証券、国債、ノートが含まれるという。DTCCは、このノーアクションレターにより通常よりも迅速にサービスを開始できるとしている。

DTCは2026年後半に同サービスの提供開始を見込んでいる。ノーアクションレターの下でDTCは、自社の技術要件に基づき事前承認したブロックチェーン上で、登録済みウォレット等の要件を満たす参加者向けにサービスを提供する想定だ。DTCCは今後数カ月以内に、ウォレット登録を含むオンボーディング要件や、対応ブロックチェーンの承認プロセスについて詳細を示すとしている。

なお今回の発表を受け、米証券取引委員会(SEC)の委員長であるポール・アトキンス(Paul Atkins)氏は自身のXアカウントで、今回のDTCによる取り組みがオンチェーン資本市場に向けた重要な一歩であるとの認識を示している。

参考:DTCCノーアクションレター
画像:Reuters

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