コスモス、「ATOM」新トークノミクス設計の研究プロセス開始。手数料・収益ベースモデル検討

ATOMの新トークノミクス設計に向けた研究プロセスが開始

コスモス(Cosmos)エコシステムで、「ATOM」の新たなトークンエコノミクス(トークノミクス)モデルを研究・設計するプロセスが始動した。コスモスハブ(Cosmos Hub)フォーラムで11月25日に方針が共有され、手数料や実利用収益を軸にした持続可能なモデルの構築が目標に掲げられた。

今回の研究プロセスは、提案要求書(RFP:Request for Proposals)の公開、研究チーム選定、情報収集、研究結果・分析、ガバナンスの5段階で進む想定となっている。研究目標には、現在のATOMの市場動向の整理、代替モデルのシミュレーション、持続可能な需給要因の特定、そして長期的な移行計画の設計が含まれる。

検討対象としてコミュニティ内で挙がっているアイデア例には、長期ステーカーを優遇する段階的な報酬設計、インフレ率の引き下げ、ATOMをリザーブやガス・決済資産として統一的に利用する構想、蓄積された手数料に連動してインフレ率を調整する変動型モデルなどがある。これらの案は、ATOMがコスモスエコシステムにおける役割をより明確にし、今後の企業利用の拡大も見据えた成長の土台にする狙いがある。ただし、これらはあくまで「議論に出ている方向性」であり、研究フェーズで妥当性や影響が精査される位置づけだ。

また研究では、既存の「循環型」トークノミクスモデルからの脱却も論点に据える。循環型とは、トークン発行(インフレ)などで報酬原資を回しつつ価格上昇が前提になりやすい設計を指し、価格下落局面でエコシステム全体が不安定化するリスクがあると指摘される。これに対し、コスモススタックの企業導入やサービス利用に伴う実収益(手数料等)に基づく「非循環型」モデルへの移行を探る方針が示された。

投稿では、短期的な価格変動の影響を受けにくい収益・手数料ベースの設計へ寄せることで、継続的な手数料収益が見込める限り、より持続可能な成長を目指すという問題意識も示された。加えて、まず基盤となるモデルを設計したうえで、その上に将来的な追加メカニズムを積み上げられる構造にすることも想定されている。

本取り組みは、インターチェーンファウンデーション(Interchain Foundation:ICF)の委託によりコスモスラボ(Cosmos Labs)が実施する。初期段階では、コスモスラボがトークノミクスに関するRFPをコスモスハブフォーラムで公開し、ブロックチェーン経済学やプロトコル設計に経験を持つ複数の研究機関へ依頼することで、多様な手法・視点を確保し、堅牢なモデリングと設計を目指すとしている。

なお今回の研究は、投資助言やATOM価格の操作を意図したものではなく、エコシステムの健全性と長期持続可能性の支援を目的とする、とも強調されている。

参考:コスモスフォーラム
画像:PIXTA

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田村聖次

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
SNSでは、チェコ人という名義で、ブロックチェーンエンジニアや、マーケターとしても活動している。「あたらしい経済」の外部記者として記事の執筆も。

和歌山大学システム工学部所属
格闘技やオーケストラ、茶道など幅広い趣味を持つ。
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