HSBCがe-HKDの試験運用完了
香港大手銀行のHSBCが、「プロジェクト・デジタル香港ドルプラス(Project e-HKD+)」の下で実施された試験運用の結果を7月9日に発表した。
「プロジェクト・デジタル香港ドルプラス」は、香港金融管理局(HKMA)が推進する中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタル香港ドル(e-HKD)」の実証実験プロジェクト。同プロジェクトの第1段階では、リテール向けユースケースの試験運用が行われ、2023年10月に完了した。今回発表された結果はその第2段階にあたり、今年3月14日に開始された。
第2段階では、e-HKDやトークン化預金などを設計・実装・運用するうえでの技術的ユースケースが検証されたとのこと。検証には、パブリック型およびプライベート型の分散型台帳技術(DLT)が活用されたという。
パブリック型のDLT環境では、アービトラム(Arbitrum)、イーサリアム(Ethereum)、リネア(Linea)、ポリゴン(Polygon)といったパブリックブロックチェーンが採用されたとのこと。これらのチェーン上では、e-HKDが価値の保存や移転手段として、またトークン化資産の決済手段としてどのように機能するかが検証されたという。
またHSBCは、ハイパーレジャー・ベス(Hyperledger Besu)を基盤とする独自のプライベート型DLTも構築したとのこと。
さらに同行は、プライバシー強化技術(PET)や分散型ID(DID)といった技術も活用したとのことだ。これらの技術においては、e-HKDやトークン化預金、その他の実資産におけるプライバシーとセキュリティを確保する方法が検討されたという。
なおPETとは、個人・組織のプライバシーを守りながらデータの利用や共有を可能にする技術群である。またDIDとは、ブロックチェーンなどの分散型技術の利用により、自身で個人のアイデンティティを管理するIDのことだ。
HSBCは今回の検証にあわせて、香港の700人以上を対象としたe-HKDに関する意識調査も実施したとのこと。
この調査では、回答者の90%がe-HKD取引におけるプライバシーの重要性を認識していると答えたという。また全体の42%が、e-HKDの概念を理解していると回答し、プロ投資家に限るとその割合は約65%とのこと。さらに回答者全体の約3分の1が、e-HKDをデジタル資産の取引に利用したいと回答したという。
HSBCはこれらの結果を踏まえ、e-HKDの実用化に向けたさらなる設計案を提示していく予定とのことだ。
参考:HSBC
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