5月8日の審議入りは否決。再審議に向けた動きも
米国におけるステーブルコイン規制に関する「GENIUS法案(S.1582)」の新たな改訂版が公開され、旧法案からの主な変更点が明らかになった。
最新版の「GENIUS法案」では、3月に上院銀行委員会で承認された委員会版に比べ、いくつか重要な修正が加えられている。
まず、外国発行者への規制適用が明記された。これにより、米国外に拠点を置くステーブルコイン発行者であっても、米国居住者を対象とする場合には米国の規制に従う義務が生じる。USDTを発行するテザー社(Tether)などの海外発行体も、こうした規制の枠組みに組み込まれる見通しだ。
また、DeFi(分散型金融)への適用除外も明文化された。分散型台帳技術(DLT)や自己管理型ウォレット、ノードの運営、流動性プールへの参加などは規制対象外とされており、DeFi業界にとっての法的リスクが軽減される狙いがある。
さらに、暗号資産取引所やカストディアンに対しては、非認可ステーブルコインの取り扱いを段階的に終了するための3年間の猶予期間が設けられる。これにより暗号資産取引所コインベース(Coinbase)やバイナンス(Binance)、カストディアンのビットゴー(BitGo)などの業界関係者は、新規制への移行準備に時間的猶予を確保できる。
加えて、財務省長官には「セーフハーバー(特例措置)」の付与権限が新たに与えられ、小規模または試験的なプロジェクトに対して柔軟な規制対応が可能となる。ただし「国家的緊急事態」などの場合には、財務省が一方的に介入できる余地もあり、行政権限の強化に対する懸念も一部で指摘されている。
なお、5月8日時点では、当該改訂版に関する正式な審議は米上院で行われなかった。これは、審議開始に必要な「討論終結(cloture)」の動議が否決されたためで、採決結果は賛成48票、反対49票で、所要の60票には届かなかった。
また一部報道によれば、民主党の一部議員が、法案文言の最終化が不十分であることや、マネーロンダリング対策、外国発行体への対応が不十分であることを理由に、さらなる協議の時間を求めたとされている。
なお共和党のジョン・チューン(John Thune)上院議員は5月8日、この改訂版の再審議を求める動議を提出している。
「GENIUS法案」は、米国における支払い用ステーブルコインの発行・運用を規制する法案で、発行者の登録制度や消費者保護、DeFi除外、財務省の特例措置権限などを盛り込んでいる。