GENIUS法案が米上院で否決
米ドル連動ステーブルコインの規制枠組みを創設する法案が、5月8日に米上院で重要な関門を通過できず、障害に直面した。
この障害は、暗号資産(仮想通貨)業界にとって打撃である。同業界は長年にわたり、議会がデジタル資産に関する新たなルールを定める法案を可決するよう強く求めてきた。暗号資産セクターは、昨年の大統領選で暗号資産推進派の連邦議員候補を支援するために、1億1,900万ドル(約1,721億円)以上を投じ、同問題を超党派の課題として訴えていた。
ステーブルコインの利用は近年急速に拡大している。支持者は、これらが即時決済手段として活用できると主張している。アナリストや業界ロビイストの間では、ステーブルコイン規制法案は今年中にほぼ確実に可決されるとの見方もあったが、上院で提出されたこの法案(通称「GENIUS法案」)は、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領のさまざまな暗号資産関連事業への不満が高まる中で、民主党からの反発に直面していた。
5月8日の採決では、法案を本会議投票に進めることに賛成したのは49名にとどまり、討議を正式に終結させるのに必要な60票を下回った。特に注目されたのは、共和党のジョシュ・ホーリー(Josh Hawley)上院議員とランド・ポール(Rand Paul)上院議員が、民主党とともに反対票を投じた点である。
同法案を上院銀行委員会から通過させた民主党のマーク・ワーナー(Mark Warner)氏は声明で「私たちはGENIUS法案において重要な進展を遂げたが、まだ完成には至っていない。法案本文が完成していない段階で、同僚に賛成票を求めることは私の良心が許さない」と述べた。
同法案を当初支持していたワーナー氏を含む複数の民主党議員は5月3日、共和党側が外国でのステーブルコインの問題やマネーロンダリング対策に関する条項の強化について交渉に応じなかったと指摘した。
民主党は、この法案に対して懸念を示している。特にトランプ氏の暗号資産企業「ワールド・リバティ・ファイナンシャル(World Liberty Financial:WLFI)」が、アブダビの投資会社による暗号資産取引所バイナンス(Binance)への20億ドル(約2,884億円)の投資にWLFIのステーブルコインを使用することを明らかにしたことが発端となっている。
法案の採決を阻止した投票後、上院本会議で演説した上院多数党院内総務のジョン・チューン(John Thune)氏は、民主党に失望を表明し、「ホワイトハウスにとっての超党派的成果を否定した」と非難した。
「本会議に上程されるすべての法案が最終法案になるわけではない」とチューン氏は語った。
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。
Stablecoin bill fails to clear key hurdle in U.S. Senate
(Reporting by Hannah Lang in New York; Editing by Andrea Ricci)
翻訳:大津賀新也(あたらしい経済)
画像:Reuters