欧州中銀と欧州委員会、ステーブルコイン規制めぐり対立。米暗号資産政策の波にMiCAは耐えうるか=報道

米ステーブルコイン拡大に警鐘鳴らすECB

欧州中央銀行(ECB)と欧州委員会(EC)は、EUの暗号資産(仮想通貨)規制(MiCA/:Markets in Crypto-Assets Regulation)がトランプ政権の政策に耐えうるかをめぐって対立しているようだ。ポリティコ(POLITICO)が4月22日に報じた。

報道によればECBは、ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領政権が推進するSTABLE法、GENIUS法などのステーブルコイン関連政策により、米国のステーブルコインがEU経済に金融的な「感染(contagion)」を引き起こす恐れがあると警告してる。

ECBは、現行のEUの暗号資産規制(MiCA/MiCAR:Markets in Crypto-Assets Regulation)では加速する米国のステーブルコイン産業に対応しきれず、特に「マルチ発行モデル(multi-issuance)」に対する規制が「過度に寛容」だと指摘し、MiCAの早急な見直しを求めている。

さらにECBは、米ドル建てのステーブルコインがEU内の貯蓄を米国市場へ流出させるリスクについても懸念を示している。

これに対し欧州委員会は、ECBの主張はMiCAの構造に対する「根本的な誤解に基づいている」とし、MiCAはECBが懸念するリスクに対処する目的で設計されていると反論。ECBの分析は「大げさ」であり、米国のステーブルコイン業界の成長がEUに与える影響を判断するのは時期尚早だとした。

また欧州委員会は、MiCAはすでに暗号資産提供者に対してEU市場での事業展開に厳格な基準の順守を求めており、テザー社発行の米ドルステーブルコイン「USDT」を含む一部ステーブルコインはEUの取引所から既に上場廃止されていると説明した。

さらに法制度上、中央銀行が「支払いシステムの円滑な運営や金融政策の伝達、通貨主権への脅威がある」と判断した場合、そのステーブルコイン発行者を市場から排除できる条項もMiCAには含まれていると欧州委員会は主張し、既存制度内でリスクを十分に管理できると述べた。

また一部では、ECBが自身の進める「デジタルユーロ」プロジェクトへの政治的支持を強化するために、ステーブルコインのリスクを必要以上に強調しているという見方もあるようだ。

このプロジェクトは、欧州の金融インフラを暗号資産から保護する目的で、欧州全域の支払いシステムを構築する取り組みである。

 一方米国では、トランプ大統領が8月までにステーブルコインに関する新たな規則を整備するよう指示している。

米国では現在、ステーブルコインに関する規制枠組みに向け、下院では「より良い台帳経済の実現に向けたステーブルコインの透明性および説明責任に関する法律:STABLE法」、上院では「米国ステーブルコインのための国家的イノベーションの指導と確立法案:GENIUS法」がそれぞれ審議中だ。

参考:ポリティコ
画像:iStock/Pradeep-Thomas-Thundiyil

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髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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