LIFULLがSecuritizeと不動産セキュリティトークン発行スキームの実証実験完了の報告(LIFULL松坂氏、Securitize森田氏コメント)

不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」等の住生活関連サービスを提供する株式会社LIFULL(ライフル)のグループ会社株式会社LIFULL Social Fundingとデジタル証券プラットフォームを提供するSecuritize(セキュリタイズ)が共同で、空き家の利活用等への投資における不動産セキュリティトークン発行スキームの実証実験を実施したことを明らかにした。

この実証実験では、空き家の地方創生型不動産クラウドファンディングを広く推進する基盤の構築を目的に、ブロッ クチェーン技術適用による不動産ファンドにおけるオペレーションの自動執行・透明性担保について検証を行った。

実証実験の検証範囲としては、スマートコントラクトによるセキュリティトークンの分配・配当・償還の自動執行による運用コスト圧縮の程度に関してと、パブリックチェーン利用によるファンドの透明性担保の検証。スマートコントラクトの執行プロセスは、GMOあおぞらネット銀行株式会社の銀行APIから取得した入金データをトリガーにして、セキュリティトークンを投資家へ分配。そして、スマートコントラクトを用いて、セキュリティトークンの持ち分比率に応じて配当・償還を自動執行する。

パブリックチェーン利用によるファンドの透明性担保の検証は、公開された改ざん耐性のあるパブリックチェーン(Ethereumのメインネット)において、スマートコントラクトの動作および資金・トークンの流れを投資家および第三者が確認可能かどうかに関して検証した。

Securitize CEO兼共同設立者 カルロス・ドミンゴ氏は「不動産クラウドファンディングのための包括的なプラットフォームソリューションを一緒に作り上げることができ非常に嬉しく思います。日本の不動産市場の近代化を目指すSecuritizeとLIFULLにとって素晴らしいスタートです」とコメントしている。

あたらしい経済編集部は「1.SPC(Special Purpose Company/特別目的会社)保有の空き家のどのような情報をトークン化するのでしょうか?2.セキュリティートークンの1口当たりの価格、利率、供給量など決められるのでしょうか?」について、LIFULL社のプロジェクト責任者、松坂雄大氏とSecuritize社の森田悟史氏に質問を投げかけた。

松坂氏は「トークン化されるのはSPCが発行する空き家の持ち分(配当・償還を受けられる権利)となります。セキュリティートークンのスマートコントラクトの設計、1口当たりの価格、利率、供給量など、償還期限などは発行時に決められ、以降はスマートコントラクトによって執行されます。また、スマートコントラクトに埋め込まれるのは償還期限で、それ以前の勝手な償還はできないように制御されています。価格や利率などは、期末の評価替えに対応、変更できるようにするためにオフチェーン管理となっています」とコメント。

森田氏は「わたしの方では、テクノロジーの観点からコメントさせてもらいます。セキュリティートークンの設計に関してですが、まずUXを考慮してサーバ側で鍵を管理する仕組みにしていますが、ユーザごとに鍵は割り当てており、移転制御についてはコントラクト上のホワイトリストを使用して実施しています。また、投資や分配を振り込みによって行った際に、銀行APIを使用して金額を取得し、同時にスマートコントラクト上に内部管理用のコインを発行しております。これにより、お金の流れもチェーンに刻まれるので検証することが可能になり、DvP(証券の引渡しと代金の支払い)や分配・償還の自動化が実現できております。ちなみにコントラクト上のホワイトリストとは、STOなど、流通制限が必要な場合によく使われる手法で、リスト化したアドレスにしか転送できないようにするものです。今回は、きちんとKYCなどが済んだ人だけの間でしか流通しないように使用しています。ホワイトリストへのアドレスの追加は、特権鍵のみで実施可能なようになっております」とコメント。

本実証実験で得られた結果を踏まえて、LIFULLは、今後、来年度改正施行予定の金融商品取引法や不動産特定共同事業法等の法令下における不動産セキュリティートークンファンドの組成検討・検証を進めていくとのことだ。そして、パブリックチェーンで実装することで監査の必要性がなくなり、プログラムや帳簿の維持管理が不要になり、自律的なサービスが生まれやすくなり、不動産ファンドも比較的DAO化しやすくなるので、さらに深く検証していきたいとのことだ。

編集部のコメント

LIFULL社は、2019年にLIFULLが、急増する空き家や未登記による所有者不明不動産問題の解決に向け、ブロックチェーン技術を用いた不動産権利移転記録の実証実験を2019年11月より開始することを発表しています。

その実証実験において、パブリックブロックチェーンの公証性と特定の機関に依らず取引のタイムスタンプを記録・保持できる点に着目し、安価に不動産の権利移転記録を残し、移転登記の代替としての可能性を探っていました。今回のLIFULL社とSecuritzeの実証実験は、2018年にJPMorganとカナダ銀行らが債券発行を行なったプロジェクト「Dromaius」に近いと、考えられます。このDromaiusのアプリケーションには、オリジネーション、流通、執行、決済、金利支払い、満期返済など、債務証書取引ライフサイクル全体に機能を組み込むように設計されています。このように事前に、償却期限、利率、債券価格などを決めて、スマートコントラクトにプログラミングしえる環境だということです。それを踏まえると、いかに債券発行・流通プロセスがブロックチェーンと相性が良いかわかると思います。

しかし、今回のプロジェクトの場合、償却期限はオンチェーンで処理をしますが、時価と利率は、書き換え変更にするためオフチェーンで処理すしています。つまり、オンチェーンとオフチェーンのバランスの最適化がセキュリティートークンを発行する上で、重要なファクターになるのだと、あたらしい経済編集部は考えます。そして債券発行に関して、満期保有債券と同様に考えると、決算整理の際に評価替えの可能性があるので、オンチェーン上で処理しないのだと、考えられます。さらに、スマートコントラクト上で機能するコインが法律上どう扱われるかによって、セキュリティートークンのアーキテクチャは、大きく変わるとも考えられます。

コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)

(images:Leyn)

 

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あたらしい経済 編集部

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