バイナンス、VIP顧客「DWF Labs」の市場操作疑惑報道を否定

取引手数料を優先

大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)が、VIP顧客であるマーケット・メーカーDWF Labsによる市場操作と内部調査に関する報道を否定した。

これはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が関係者の話として5月9日に報じたもの。報道によれば、バイナンスはDWF Labsの市場操作の疑いを指摘したバイナンスの市場監視チームの責任者を解雇したという。

この解雇は、バイナンスがすでにSECの監視対象であったにもかかわらず、市場操作の証拠を無視し、自社の慣行の修正よりVIP顧客から取引手数料を得ることを優先する結果になったと元関係者は述べている。

バイナンスは2022年に市場監視チームの増強を開始。バンク・オブ・アメリカ(Bank of America)やシタデル(Citadel)らから12人の調査員を採用したという。

同監視チームは、市場操作を追跡し、ウォッシュトレード(取引誘引を目的とした、同一人物による同じ資産の売買両方の注文を発注する取引)を検出するための新しいソフトウェアツールを構築。

同監視チームは調査の結果、DWF Labsが複数のトークン価格を操作し、2023年に3億ドル以上のウォッシュトレードを行っていたことを特定。これは利用規約違反であるため、DWF Labsの排除を提言する報告書をバイナンスに提出したという。しかし、バイナンスは市場操作の証拠が不十分とし、DWF Labs排除の提言を拒否し、報告書提出の1週間後にチームの責任者を解雇したという。

当事者らはXで反論

この報道に対し、バイナンスは「WSJの取材に対し、私たちは厳格な市場監視プログラムを確約する。私たちは市場の乱用を許さない」と述べ、「当社の調査チームの仕事は、中立的な立場で、マーケット・メーカー企業の競合他社に対する主張から生じる可能性のあるバイアスを含め、いかなるバイアスもかけずに証拠を調査すること」と主張している。

なおバイナンスによれば、過去3年間で、約35万5,000人のユーザー、2兆5,000億ドル以上の取引高を持つユーザーを利用規約違反で退会させてきたという。

またDWF Labsは「最近報道された多くの疑惑は根拠がなく、事実を歪曲している」と報道を否定している。

バイナンスの共同創業者でバイナンスラボの責任者であるイ・へ(Yi He)氏は報道について、「WSJが一貫して長期にわたってバイナンスに傾倒してくれたことで、私たちの露出が大幅に増え、マーケティング予算を大幅に節約できたことに非常に感謝している」と述べ、一方で「一部の主流メディアの記事が、事実よりもむしろ感情や偏見によってどんどん左右されるという面白い現象に気づいた。例えば、元従業員の不満が記事のベースになることがある一方で、(事実として)バイナンスがWeb3ギャンブルネットワークZKasinoの黒幕を捜査・逮捕するために法執行機関を積極的に支援していることは、報道するに値しない、とみなされている」と自身のXアカウントからポストしている。

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参考:WSJ
images:iStock/ArtemisDiana

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
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