米司法省がクーコインと創業者らを刑事告訴、AML法違反で

クーコインが90億ドルの資金洗浄に関わったか

米司法省(DOJ)が、暗号資産(仮想通貨)取引所クーコイン(KuCoin)と同社創業者2人を銀行秘密法および無許可送金に関する犯罪で刑事告訴したと3月26日発表した。

DOJの発表によると、クーコインと同社創業者のチュン・ガン(Chun Gan:通称マイケル)氏とケ・タン(Ke Tang:通称エリック)氏は米国のアンチマネーロンダリング法に違反したという。

両氏は、クーコインがマネーロンダリングやテロ資金調達に使用されることを防ぐための適切なマネーロンダリング防止(AML)プログラムを意図的に維持ぜず、顧客の身元確認のための適切な手順を踏まず、疑わしい活動に関する報告書を提出しなかったことで、無認可の送金業務を運営し、銀行機密保護法に違反した罪で共謀したとDOJは主張している。

なおマイケル氏とエリック氏は現在逃走中とのことだ。

両氏の罪状は銀行秘密法違反の共謀と無許可送金業の共謀罪であり、それぞれ最高刑は懲役5年だ。

ニューヨーク州南部地区連邦検事のダミアン・ウィリアムズ(Damian Williams)氏によれば、「クーコインは相当数の米国ユーザーが同社プラットフォームで取引しているという事実を意図的に隠そうとした」という。同氏は、クーコインが米国の大規模な顧客基盤を利用したことで、「1日の取引額は数十億ドル、年間取引額は数兆ドルを誇る世界最大の暗号資産デリバティブとスポット取引所のひとつとなった」と指摘した。

またマイケル氏とエリック氏についても「被告らはクーコインが金融市場の影で運営され、不正なマネーロンダリングの隠れ家として利用されることを容認し、その結果クーコインは50億ドル以上を受け取ると同時に、40億ドル以上の疑わしい犯罪資金を送金した」と述べている。

ウィリアムズ連邦検事は今回の告発を、「他の暗号資産取引所に明確なメッセージを送るもの」だとし、「米国の顧客にサービスを提供するつもりなら、米国の法律に従わなければならない」と伝えている。

告訴の経緯

起訴状によれば、クーコインは207カ国に約3000万人のユーザーを保有しているという。

また、クーコインは少なくとも2023年7月まで適切なKYCプログラムを実施しておらず、同年7月以降もKYCプロセスは新規顧客のみに適用されるにとどまり、既存顧客には適応されなかったという。

さらにクーコインは先物取引業者として米商品先物取引委員会(CFTC)に登録することもなく、少なくとも2023年末まで、金融犯罪取締ネットワーキング(FinCEN)に資金移動業として登録することもなかったとDOJは指摘している。

またDOJはクーコインが必要なAMLとKYCプログラムを故意に維持しなかった結果、ダークネット市場やマルウェア、ランサムウェア、詐欺スキームからの収益を含む、多額の犯罪収益を洗浄する手段として利用されてきたと主張している。

クーコインの声明

クーコインは公式Xにて、「クーコインは順調に運営されており、ユーザーの資産は絶対に安全です。私たちは関連する報告を認識しており、現在弁護士を通じて詳細を調査しています。私たちは各国の法令を尊重し、コンプライアンス基準を厳守しております」と3月27日にポストしている。

また、クーコインのCEOであるジョニー・リュウ(Johnny Lyu)氏も、同規制問題を認識しているとXにて報告した。

同氏は「私たちが規制問題に取り組んでいる間、プラットフォームは影響を受けず、通常通り稼動しています。また、お客様の資産は安全に保管されています。私たちのチームと私は、進捗状況についてタイムリーなアップデートを提供します」と報告している。

クーコインは昨年3月にも、米ニューヨーク州にて未登録で事業を行ったとして米ニューヨーク州の司法当局から提訴されている。

その際に当局は、クーコインは取引所ではあるものの、SECに登録せず、CFTCからも認められていない点を問題視していた。さらにクーコインが、セイシェル・カナダ・オランダ等で、免許を取得せずに営業している点についても批難していた。

なおクーコインは昨年12月、同訴訟に決着をつけるため、2200万ドル(当時の価格で約32億円)を支払うことに合意している。

関連ニュース

参考:DOJ
images:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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