ヴィタリック、クリプトとAIの交わり方の課題や将来性を考察

クリプトとAIの交わり方

イーサリアム(Ethereum)の共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、AI(人工知能)とクリプト(ブロックチェーン・暗号資産の総称)の交わりは課題があるにせよ、可能性はあるとの見方を示した。同氏が1月30日に投稿したブログで述べている。

ブログのタイトルは「The promise and challenges of crypto + AI applications(クリプト+AIアプリケーションの将来性と課題)」だ。

同ブログでブテリン氏は、AIの潜在的な役割をビデオゲームの構成要素に例えて考察。広範な概念を持つAIを、「ゲームのプレイヤーとしてのAI」、「ゲームへのインターフェースとしてのAI」、「ゲームのルールとしてのAI」、「ゲームの目的としてのAI」の4つの主要カテゴリーに分類した。

その中でも「ゲームのプレイヤーとしてのAI」は、実行可能性が高いとブテリン氏は評価している。

このカテゴリーは、オンチェーン分散型取引所(DEX)が重要な用途に使われ始めて以来、10年近く存在してきたものであり、ボットは人間よりもはるかに優れた裁定取引(アービトラージ)を行えるとブテリン氏は指摘。最終的には非常に現実的なAIとクリプトの組み合わせだと評価した。

また同氏は、このカテゴリーのAIは高度なレベルにおいて、「予測市場」を実現させるとした。これは、AIはある出来事の結果を予測するために使われ、ブロックチェーンベースのメカニズムは、AI(またはAIを操作する人)がその推測に基づいてどれだけの報酬やペナルティを受けるべきかという規則を強制できるというものだ。

次にブテリン氏は、「ゲームへのインターフェースとしてのAI」について、可能性は高いが、リスクも高いと評価している。

同カテゴリーでは、メタマスク(Metamask)の詐欺検知機能などのツールがAIにより超強化される可能性があるが、一方で純粋なAIインターフェースは他の種類のエラーのリスクを高めるため、現時点ではリスクが高すぎると指摘した。

また特記すべきリスクとしてブテリン氏は、ユーザーがオープンソースのウォレット内のAIアシスタントにアクセスできる場合、攻撃者もそのAIアシスタントにアクセスできるため、ウォレット防御を発動させないハッキングや詐欺を仕掛ける機会が無制限に与えられる点を挙げた。

同氏は、現代のすべてのAIはどこかしらバグを抱えており、「モデルへのアクセスが制限されている学習プロセスであっても、バグを見つけるのはさほど難しいことではない」とも述べている。

そしてブテリン氏が最もハイリスクで注意深く行動するべきと考えているのが、「ゲームのルールとしてのAI」だ。

クリプトのオープンソースという性質は、AIを「ゲームのルール」として使おうとする場合、AIと相反する働きをするという。

これは例えば「AI裁判官」を使ったり、スマートコントラクトやDAOが特定の主観的判断を下すのを助けるためにAIを利用する場合とのことだ。攻撃者は自由に最適化された攻撃を設計し、モデルを騙して真逆のことを信じさせることができるとブテリン氏は述べている。

ブテリン氏は、ゼロ知識証明がモデルを証明することに役立つかもしれないとしたが、それはAIのすでに重い処理能力をさらに増やすだけであり、学習データを選んだ人がポイズニング攻撃で簡単にモデルを壊してしまう危険性があると指摘した。

最後にブテリン氏は、「ゲームの目的としてのAI」として、もし開発者たちが「信頼できるブラックボックスAI」を作り上げることができれば、ブロックチェーンを超えた実用性を持つAIを作るのにも使えるだろうし、その用途は大きく広がる可能性があるとの見方を示した。

ブテリン氏は、「これらのすべての分野でAIの建設的なユースケースの試みが増えることを期待している」と締めくくっている。

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参考:ブログ
images:Reuters

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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