BitMEX元CEOアーサーヘイズ、米国のCZとBinanceへの扱いを「馬鹿げている」と主張

アーサー・ヘイズのエッセイ

大手暗号資産(仮想通貨)取引所バイナンス(Binance)および同社の前CEOで創業者のチャンポン・ジャオ(Changpeng Zhao:CZ)氏が米国で受けた仕打ちは「馬鹿げている」と暗号資産取引所ビットメックス(BitMEX)の元責任者アーサー・ヘイズ(Arthur Hayes)氏が11月28日主張した。

自身のSubstackアカウントに投稿したエッセイでヘイズ氏は、今回のバイナンスとCZ氏に対する米政府の対応は、伝統的大手金融機関が受けた扱いと比べて、不釣り合いに厳しいものであるとし、「国家の手による処罰の恣意的な性質を浮き彫りにしている」と非難した。

CZ氏は11月22日、バイナンスが効果的なマネーロンダリング防止プログラムを保てない原因を故意に作ったとして有罪を認めた後、11月23日にバイナンスのCEOを辞任。11月29日にはバイナンスUSの会長職も退いた。

なおCZ氏はアラブ首長国連邦(UAE)とカナダの国籍を持っており、判決を待つ間、家族が待つUAEへの帰国を訴えていたが、米判事はこれを却下している。

またバイナンスは米国当局との和解のため、合計で約43億ドル(約6,370.3億円)の罰金を支払うことに合意している。

CZ氏とバイナンスに対する「馬鹿げた」対応

ヘイズ氏は「ゴールドマン・サックス元CEOのロイド・ブランクファイン(Lloyd Blankfein)氏は、同氏の統治下にあったゴールドマン・サックスがマレーシアのナジブ・ラザク(Najib Razak)元首相と金融業者のジョー・ロー(Jho Loh)氏に100億ドル以上を盗ませたときに同じ扱いを受けただろうか?」と述べ、「ロイド氏はストックオプションを残したまま引退したし、ゴールドマン・サックスは刑事責任を問われなかった」と指摘した。

なおこの事件は、2015年にウォールストリートジャーナルのスクープにて明らかとなったものだ。ナジブ氏が設立した政府系投資会社1マレーシア・デベロップメント(1MDB)で資金の流出・横領が起き、それら犯罪行為に関与したとし、ゴールドマン・サックスや関係者らが巻き込まれ一大スキャンダルになった。1MDBから不正に流用された金額は2009年から2014年の間に45億ドル(約6,618.6億円)にのぼり、そのうちの約7億ドル(約1,029.5億円)はナジブ氏の私的口座に流れていた。

なおゴールドマン・サックスは2020年、29億ドル(約4350億円)の罰金を科せられている。

またヘイズ氏は「1930年代の大恐慌以来、最悪の世界金融危機を引き起こしたとして、大きすぎて潰せない銀行のCEOの誰かが刑事訴追された事例はない」とし、その理由を「それらを起訴すれば銀行システムが脅かされるからだ」とヘイズ氏は分析している。

アメリカの金融・政治システムの脅威に

またヘイズ氏は、今回のバイナンスおよびCZ氏への仕打ちは、暗号資産取引所やその他の中央集権的な取引所が、伝統的なアメリカ主導の世界金融システムに対する脅威となっているからだと考察した。

ヘイズ氏は、CZ氏が「無名」から「10年足らずで地球上で最も裕福な人間の一人にまで上り詰め、その栄光は世界中の何百万人もの人々が暗号資産を取引できるようにすることを前提条件としていた」とし、バイナンスの功績として「経済的自由への切符となるコインやトークンを購入する手段を提供した。そしてそれは、新しい政治的、経済的、技術的なシステムに投資する非常に効率的な方法だった」と述べた。

しかしこのことが米国の金融と政治の権力にとっては不都合なものであったとヘイズ氏は指摘。

「ブロックチェーンを活用する暗号資産仲介者と暗号資産そのものの所有者は人々自身であり」、PCやモバイルアプリで即時にやり取りできるシステムは、米国主導の伝統的金融・政治システムの既得権益を脅かすものであったため、「CZ氏は大きな代償を払うことになった」とヘイズ氏は指摘している。

ヘイズ氏について

ヘイズ氏は2020年、米商品先物取引委員会(CFTC)がビットメックスをマネーロンダリングと米国での違法営業で起訴し、ニューヨーク地区連邦検事が同氏を銀行秘密法違反で起訴したことを受け、ビットメックスのCEOを辞任している。

またヘイズ氏は2022年2月、銀行秘密法違反で有罪を認め、1000万ドル(約14.7億円)の罰金を支払った。また、ヘイズ氏は6ヶ月の自宅謹慎と2年間の保護観察処分を言い渡されていた。

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参考:アーサー・ヘイズ
images:iStocks/royyimzy・Pict-Rider

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者

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