暗号資産詐欺疑惑のCelsius、創業者マシンスキーは何者か?

Celsius、創業者マシンスキーは何者か?

アレックス・マシンスキー(Alex Mashinsky)氏は、破産した暗号資産(仮想通貨)レンディング企業セルシウスネットワーク(Celsius Network)の共同設立者だ。検察当局は投資家から数十億ドルを騙し取ったと主張しているが、同氏は自らを現代のロビンフッド(イギリスの英雄)と称する連続起業家だ。

ニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズ(General Letitia James)が1月5日に起こした訴訟によると、マシンスキー氏(57)は、セルシウスがリスクの高い投資で何億ドルもの損失を出していることを隠しながら、同社を銀行に代わる安全な投資先として不正に宣伝していたとしている。

訴訟では、マシンスキー氏がニューヨークで今後ビジネスを行うことを禁止し、損害賠償や返還金の支払いを求めている。

この訴訟は、FTX創業者サム・バンクマンフリード(Sam Bankman-Fried)氏に対する非難で揺れている暗号資産セクターの最新の膿だ。なお投資家を騙し、数十億ドルの損失をもたらしたと非難されているサム氏は、1月4日に無罪を主張した。

マシンスキー氏はウクライナ出身で、家族はイスラエルに移住している。そして同氏は1988年に旅行で訪れたニューヨークで、アメリカへの移住を決意したとForbesのポッドキャストで語っている。

そして同氏は「周りを見渡して、もう二度と祖国へ戻らないことを決意した」と伝えている。

その後、マシンスキー氏は2004年に上場したアービネット(Arbinet)や、ニューヨークの地下鉄にWi-Fiを提供するトランジットワイヤレス(Transit Wireless)など8社を創業した。

またマシンスキー氏は、ライドシェアアプリ「Uber」の前身となるVoIP(Voice over Internet Protocol)や、ビットコインに先行する暗号資産のアイデアを生み出したと主張している。

マシンスキー氏が暗号資産セクターに関わりはじめたのは2017年だ。同氏のベンチャーファンドであるガバーニング・ダイナミクス(Governing Dynamics)が、ブロックチェーン企業マイクロマネー(MicroMoney)を戦略的パートナーとして迎え入れた際である。そして同年、同氏はセルシウスを設立した。

技術誌「インダストリースタンダード(Industry Standard)」の1999年の記事によると、マシンスキー氏は10代の頃、イスラエルのベングリオン空港の税関オークションでヘアドライヤーやビデオデッキなどの没収品を買い、転売して利益を得ていたという。

その頃のマシンスキー氏は、人の全身移植をする事業を始めようと考えていたようだ。同氏は「老人に新しい体を与えよう。頭は残し、背骨も残し、残りは作り直そう」と伝えていた。

また個人サイトによると、マシンスキー氏が当時経営していた企業の幹部らは1984年から1987年までイスラエル軍に所属し、パイロットとしての訓練を受け、ゴラニ歩兵部隊に所属していたという。

マシンスキー氏は、様々なベンチャー企業を通して15億ドル以上の資金を集め、同氏や他の投資家が現金化した際には30億ドル以上の収益をあげていたようだ。そして同氏のウェブサイトによると、同氏は50以上の特許を保有しているとのことである。

そして個人サイトには「最大のリスクは取らないこと」と記載されている。

ニューヨーク州司法省の訴えによれば、マシンスキー氏は、セルシウスの顔として何百回ものインタビュー、ブログ記事、ライブストリームで、暗号資産をセルシウスに預ければ、リスクを最小限に抑えて高いリターンを得られると顧客に約束したという。

ロイターは、マシンスキー氏や彼の弁護士にもコメントを求めたが返答はなかった。

セルシウスは、投資家が業界最高水準の17%のリターンを得られると約束していたという。訴訟では、マシンスキー氏の「俺たちは金持ちから金を巻き上げるんだ(We take it from the rich)」という言葉が引用されている。

2022年初頭までに、セルシウスは投資家から200億ドルもの暗号資産を集めていた。しかし、同社は約束の利回りを、投資家へ支払うのに十分な収益を上げるのに苦労し、よりリスクの高い投資に移行したと主張している。

セルシウスは無担保で数億ドルの融資を行い、規制されていない分散型金融プラットフォームにさらに数億ドルを投資していたと、訴訟では伝えられている。

「銀行はあなたの友達ではない(banks are not your friends,)」といったスローガンのTシャツを着ていたマシンスキー氏。同氏は訴状によると、セルシウスが低リスクの投資で高い利回りを生み出していると、投資家に虚偽の説明を続けていたという。

2022年6月10日のYouTube動画「Ask Mashinsky Anything」で、マシンスキー氏は「セルシウスには数十億の流動性がある」と発言していた。しかしその2日後、流動性とセルシウスの運営を安定させるために、同社は投資家の引き出しを一時停止した。

そしてセルシウスは昨年7月13日、11億9000万ドルの赤字を計上し、連邦破産法第11条の適用を申請した。

(Reporting by John McCrank in New York and Hannah Lang in Washington; Editing by Lananh Nguyen and Matthew Lewis)
※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです。

images:Reuters

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竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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