ウィスコンシン州で刑事告訴
米ステーブルコイン発行大手のサークル(Circle Internet Financial)が、詐欺被害資金の回収をめぐり、捜査当局の要請や裁判所命令に十分応じていないとして、複数の州の法執行・司法当局から批判を受けている。「国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)」が7月8日に報じた。
時価総額約170億ドル(約2,754億3,000万円)規模のサークルは、米ドル連動型ステーブルコイン「USDC」の発行体として知られ、ビザ(Visa)やマスターカード(Mastercard)をはじめとする大手企業との提携や、法執行機関との協力体制をアピールしてきた。
一方、米ウィスコンシン州では、裁判所命令に従わなかったとして、州検察当局がサークルを軽犯罪容疑で刑事告訴した。州検察が大手金融企業を刑事告訴するのは極めて異例だという。
事件は、ウォルワース郡の男性が、一方的に届いたメッセージをきっかけに知り合った女性を名乗る人物から投資を勧められ、約38万1,000USDCを詐取されたことに端を発する。
裁判所は昨年8月、盗まれたUSDCの凍結をサークルに命じ、同社はこれに応じた。
しかし同年12月、裁判所は凍結されたUSDCを無効化し、同額の新たなUSDCをウォルワース郡保安官事務所が管理するウォレットへ移転することで差し押さえを実行するよう命じた。これに対しサークルは、技術的に対応できないと主張し、州検察による刑事告訴につながった。
サークルは裁判所への提出書面で、今回の告訴は「根拠がない」として却下を求めている。同社は、命令に従う技術的能力がなかったこと、被害者補償に向けた代替案を検察側へ提示したものの十分な協議が行われなかったこと、さらにウィスコンシン州裁判所には当該命令を出す管轄権がなかったことなどを主張している。
ICIJによると、ニューヨーク州の地方検事らも今年1月、連邦上院議員宛ての書簡でサークルの対応に懸念を示していた。
書簡では、サークルが裁判所命令のない法執行機関からの資金凍結要請に応じないことに加え、盗難資金の返還を求める裁判所命令にも十分対応していないことなどが問題視された。
サークルは今年公表したブログで、「恣意的あるいは政治的な干渉」から利用者を守るため、USDCの凍結は適法な法的手続きを経た命令に基づいてのみ実施する方針だと説明している。
この姿勢は、裁判所命令がない段階でも一部の法執行機関からの要請に応じて資産凍結を実施しているとされる競合のテザー(Tether)とは対照的だ。
今回のウィスコンシン州の事件で捜査に関与したミルウォーキー郡の警察捜査官スコット・サイモンズ(アルファベット表記)氏は、サークルが被害資金の凍結要請を断ったケースや、裁判所命令を取得した時点ではすでに資金移動を止められなかったケースを、全米で少なくとも十数件確認しているとICIJに語っている。
ニューヨーク州の地方検事らの書簡では、サークルがUSDCの裏付け資産として利息を生む資産を保有していることに触れ、盗難資金を返還せず凍結にとどめる方が、同社にとって経済的利益につながる可能性があるとの見方も示された。
ブロックチェーン調査会社の研究者ユーリー・セロフ(Yury Serov)氏によると、サークルは現在少なくとも1億1,900万USDCを凍結しているという。
また、暗号資産フォレンジック企業クリプトフォーサイト・インベストゲイターズ(Cryptoforensic Investigators)のジョシュア・クーパー=ダケット(Joshua Cooper-Duckett)氏は、不正ウォレット内のUSDCをバーン(無効化)し、同額を新たに発行する「バーン・アンド・リイシュー」に対応するようソフトウェアを更新することは可能だと指摘している。
実際、テザーはICIJに対し、不正取得されたトークンについて累計11億ドル相当を再発行したと説明している。
一方サークルは、ウィスコンシン州への提出書面の注釈で、連邦検察当局との間で、盗難資金を恒久的に凍結したうえで同額の新たなUSDCを発行する「被害者補償の仕組み」について大筋合意したことを明らかにした。
ただし、この仕組みを今回のウィスコンシン州の事件に適用できるかどうかについては回答を避けている。
参考:報道
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