フィデリティ、機関投資家向けトークン化流動性ファンド「FILQ」開始。ムーディーズはMMFの最高評価

ムーディーズは「FILQ」にMMF最高水準「Aaa-mf」付与

資産運用会社フィデリティ・インターナショナル(Fidelity International)が、機関投資家およびプロ投資家向けトークン化流動性ファンド「フィデリティUSDデジタル流動性ファンド(Fidelity USD Digital Liquidity Fund:FILQ)」を開始した。トークン化インフラを提供するシグナム(Sygnum)5月13日に発表。チェーンリンク(Chainlink)は同ファンドへのオンチェーンNAVデータ提供について公表している。

FILQは、フィデリティが運用する既存の機関投資家向け流動性ファンドの戦略を踏まえたオンチェーン型の流動性商品。規制下で運用される高格付け政府証券などへの投資を通じて利回りを提供し、24時間稼働するデジタル資産市場に対応した資金管理・担保活用を想定している。

ムーディーズ・レーティングス(Moody’s Ratings)は同日、FILQに対してマネーマーケットファンド(MMF)向けの最高水準の評価「Aaa-mf」を付与した。MMFは、短期国債や高格付けの短期金融商品などを中心に運用される低リスクの資金運用ファンドで、企業や機関投資家が待機資金を一時的に運用する用途などで利用されることが多い。今回のAaa-mfは、元本保全と高い流動性という目的を達成する能力が非常に強いとする評価であり、通常の社債などの信用格付けとは異なるMMF向けの評価である。

ムーディーズによると、FILQはフィデリティが運用する約70億ドル(約1.1兆円)規模の既存LVNAV(低ボラティリティ純資産価額)ファンドと同様の投資戦略を採用しているという。LVNAVは欧州で導入されているMMF分類の1つで、価格変動を抑えながら短期金融商品で利回りを得ることを目的とした運用形態だ。

FILQのトークンはイーサリアム(Ethereum)上でERC-20規格として発行される。許可制モデルのもと、承認済みウォレットのみが取引できる。投資家は、オンボーディング完了後、シグナムの環境を通じてFILQトークンの申込・保有・償還を行える。

同ファンドは24時間365日の申込・償還に対応する設計だ。市場時間中は通常、オンチェーンで即時に近い決済が可能とされる一方、市場時間外の償還は流動性ファシリティにより支援され、状況によっては処理待ちや手数料が発生する可能性がある。

またFILQは、ステーブルコインのような決済用途に加え、利回りを得られる流動性資産としての活用を想定している。シグナムのFAQによると、FILQは規制下の高格付け政府証券などから得られる利回りへのエクスポージャーを提供しつつ、オンチェーン金融インフラ内で担保やトレジャリー用途に活用できる設計となっている。

今回の仕組みでは、フィデリティが資産運用および発行主体を担う一方、シグナムはトークン化インフラを提供する。エイペックスグループ(Apex Group)は移転代理人としてデジタルオンボーディングやウォレットのホワイトリスト登録、リアルタイム処理を支援する。またJPモルガン(J.P. Morgan)はファンド管理・カストディなどを担い、チェーンリンクは日次NAVおよび主要な分配指標をオンチェーンで配信する。

なお、近年は大手金融機関によるトークン化MMFやトークン化流動性ファンドの展開が相次いでいる。

ブラックロック(BlackRock)の「ブラックロック・米ドル機関投資家向けデジタル流動性ファンド(BlackRock USD Institutional Digital Liquidity Fund:BUIDL)」は2024年に開始されたトークン化ファンドで、現金や米国債、レポ取引などへ投資する仕組みを採用している。またJPモルガン・アセット・マネジメント(J.P. Morgan Asset Management)も、機関投資家向け流動性管理基盤「モーガン・マネー(Morgan Money)」を通じて、トークン化MMF「MONY」に加え、イーサリアム上の新たなトークン化MMF「JLTXX」も展開している。

今年2月には、米資産運用会社ウィズダムツリー(WisdomTree)がトークン化MMFについて24時間取引および即時決済を可能にするため、米SEC(証券取引委員会)から適用除外措置を取得し、関連するFINRA承認も受けた。さらにフランクリン・テンプルトン(Franklin Templeton)も、既存MMFにブロックチェーン対応の持分クラスを導入するなど、機関投資家向け短期金融商品のオンチェーン化が進んでいる。

こうした動きの背景には、24時間稼働するオンチェーン市場において、待機資金や担保資産として利用可能な「利回り付き流動性」への需要拡大があるとみられる。

参考:シグナムムーディーズ
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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