英国議員団体がNFTの著作権侵害対策とクリエイター保護を要請、ファントークンへの対処も

スポーツ団体発行のデジタル資産への対策も求める

複数の政党メンバーから構築される英国の国会議員による委員会は英国政府に対し、NFTに関連する著作権侵害からのクリエイター保護と、スポーツ団体がデジタル資産を発行することで起こりうる潜在的な損害に対処するよう求めている。このことは、英国議会による報告書「NFTs and the Blockchain: the risks to sport and culture(NFTsとブロックチェーン:スポーツと文化へのリスク)」によって10月11日公表された。

その報告書で文化・メディア・スポーツ委員会(Culture, Media and Sport Committee:CMS)のメンバーらは、「NFTは昨年ピークを迎えた時と同じレベルの人気に再び達することはないかもしれないが、伝統的な規制体制がNFTなどの新興テクノロジーによってどのように危険にさらされているかについては懸念が残る」と指摘している。

同報告書では、NFTについての誤解を招くような広告の証拠が指摘され、政府に対し、暗号資産のマーケティングの各段階で関与するすべての関係者が消費者保護の責任を負うよう求められている。

委員会はまた、政府に対し、NFTのマーケットプレイスと協力して、美術界における著作権侵害に対処するよう求めた。

委員会は、NFTのミント(発行/鋳造)は簡単かつ迅速に行えることに比べ、アーティストが権利を行使し、著作物を回収するプロセスは困難かつ時間がかかると指摘。アーティストの知的財産権に対するリスクについて警告した。

委員会はまた、スポーツリーグやチームがファンに提供するために暗号資産(仮想通貨)であるファントークンを作成することで引き起こされる弊害についても警告を発した。具体的には、ファントークンは価格変動によりサポーターに金銭的な損害を与える危険性があり、スポーツクラブの評判を損なう可能性があるというものだ。

委員会はファンのエンゲージメントを測定する際には、そういったトークンを除外するよう求めている。

CMS(文化・メディア・スポーツ)委員会の委員長であるキャロライン・ディネージ(Caroline Dinenage)氏は「アーティストたちは、彼らの努力の結晶が許可なくつまみ出され、宣伝される危険にさらされている。一方、詐欺的で誤解を招くような広告は、すでに本質的にリスクの高いビジネスに関与している投資家にとって、さらに危険なレイヤーを追加するものだ。政府は、暗号資産の流通に携わるすべての人が、消費者とクリエイターの権利を適切に保護するよう努めていることを保証しなければならない」とコメント。

また同氏はスポーツ団体によるファントークン発行について、「スポーツの世界では、クラブが忠実なサポーターから追加資金を引き出すために、たびたび実現しない特権や特典を約束して、不安定な暗号資産スキームを推進している。ファン・トークン・スキームは、サポーターとの有意義なエンゲージメントの代用としてはならない」と述べている。

英国ではプレミアリーグのサッカークラブ「マンチェスター・シティFC(Manchester City FC」をはじめとする多くのサッカークラブが、ファン向けにNFTやファントークンを発行している。

今回の警告はこういった動きを受けてのものと考えられる。

なお英国を含め、多くの国と地域でスポーツチームのファントークンの発行を行うプラットフォームとして、チリーズ(Chiliz)が運営するファンエンゲージメントプラットフォーム「Socios.com(ソシオス・ドットコム)」が業界では著名である。記事執筆時点において、同社および同社の創業者兼CEOであるアレクサンドル・ドレイファス(Alexandre Dreyfus)氏はこの件について言及していない。

※10/13 12:30 上記、一部表現に誤りがありましたので、修正いたしました。

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参考:英国議員委員会の発表
images:iStock/ismagilov

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この記事の著者・インタビューイ

髙橋知里

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

「あたらしい経済」編集部 記者・編集者
同志社大学神学部を卒業後、放送局勤務を経て、2019年幻冬舎へ入社。
同社コンテンツビジネス局では書籍PRや企業向けコンテンツの企画立案に従事。「あたらしい経済」編集部では記事執筆を担当。

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