経済協力開発機構(OECD)が世界の暗号資産(仮想通貨)税制に関する分析レポートを発表

経済協力開発機構(OECD)が世界の暗号資産(仮想通貨)税制に関する分析レポートを発表

経済協力開発機構(OECD)が暗号資産(仮想通貨)税制に関する分析レポート「Taxing Virtual Currencies: an Overview of Tax Treatments and Emerging Tax Policy Issues」を発表した。このレポートは世界50ヵ国以上の国・地域の主要な暗号資産に関する税の課税アプローチと政策のギャップを包括的に分析されたものである。

このレポートでは、ブロックチェーンと暗号資産の重要な概念と定義を取り上げ、暗号資産の特性、合法性、評価に注目し、暗号通貨の作成から廃棄までのライフサイクルのさまざまな段階における税務上の影響が分析されている。また主要な税務政策上の考慮事項を明らかにし、所得税、消費税、固定資産税の観点から暗号資産の税務処理について各国の概要が説明されている。

そしてステーブルコインや中央銀行デジタル通貨の台頭、ブロックチェーンネットワークを維持するために使用されるコンセンサスメカニズムの進化(例:プルーフオブワークではなくプルーフオブテイクの使用の増加)、分散型金融の台頭など、暗号資産への課税に関連する多くの新たな問題の税務政策への影響についてもこのレポートにて分析されている。

はじめにレポートでは、マネーロンダリングに関する金融活動作業部会(FATF)は暗号資産をデジタルで取引または譲渡でき、支払いまたは投資目的に使用できる価値のデジタル表現と定義していることを伝えている。またこのレポートでは暗号資産をペイメント・トークン(Payment tokens)、セキュリティ・トークン(Security tokens)、ユーティリティー・トークン(Utility Tokens)の3種類に分類している。

Payment tokensとは従来のドルや日本円と同様に動作することを意図していて、商品やサービスの交換手段として使用できるものだと分類されている。具体例としてビットコイン、ライトコイン、イーサリアムが挙げられている。

Security tokensとは投資目的で保有する売買可能な資産として設計されていて、法律では証券として分類されるものとなる。具体例としてSpice、tZero、BCAPが挙げられている。

Utility tokensとは、その用途として特定の商品やサービスの交換やアクセスを容易にするものだと分類されている。例えば商品やサービスの前払いやバウチャーとして、保有者が学外のサービスを利用できるようにするためのライセンスとして機能する場合があるものとのことだ。具体例としてStorjやBATが挙げられている。

暗号資産の課税可能性のあるポイントとしてエアドロップ、イニシャル・トークン・オファリング(ITO)、マイニング、マイニング報酬、ステーキングなどが挙げられている。

また多くの国では暗号資産を通貨ではなく税務上の資産カテゴリーとして捉えているとのことだ。例外としてイタリアは暗号資産を他国通貨と同様の課税方法で対応しているとのこと。そして現在、暗号資産を会計上どのように分類すべきかを示す正式なガイダンスは存在しておらず、既存の一般会計原則を適用する必要があるとのこと。そのように考えるとセキュリティートークンは証券と同様に金融資産として会計上処理し、ユーティリティートークンは役務を受けるまでの前払い勘定(負債)として処理するとのこと。ペイメント・トークンはのれん以外の無形資産として捉えていて、簿価が時価より下がれば減損処理を行うとのこと。

税務上の暗号資産の取り扱いに関して、一般的に暗号資産は所得税上は通貨ではなく無形資産や金融資産とみなされるため、通常の固定資産税のルールが適用される可能性が高く、外国為替税のルールが適用される可能性があるとのこと。生成したトークンの廃棄時には課税される可能性は高いが、現状多くの国はマイニング報酬により受け取った際に暗号資産への課税は行わず、その暗号資産がその他の財やサービスと交換された場合に課税する方針とのこと。

また分散型金融(Defi)のトークンの貸し借りで発生する利子についても言及していて、各国の税法によっては従来の利息と同じように扱われ受取時には資本所得として、支払時には損金算入可能な損失として課税されることも考えられるとのことだ。

編集部のコメント

最後にこの報告書ではコンセンサスアルゴリズムのプルーフオブステーク(PoS)によるトークンエコシステムの形成のあり方についても記載しています。PoSはビットコインなどが採用しているPoWに比べ、電気消費量が遥かに少なく、環境への配慮がとても大きいと評価しています。PoSで受け取った通貨に関して、フィンランドとオーストラリアでは課税対象とする税務ガイダンスが発表されていますが、その他の国ではまだ対応されていません。このように暗号資産に関する税務ガイダンスのあり方は各国でバラツキがあることが課題だと思われます。

コメント:竹田匡宏(あたらしい経済)

この記事の著者・インタビューイ

あたらしい経済 編集部

「あたらしい経済」 はブロックチェーン、暗号通貨などweb3特化した、幻冬舎が運営する2018年創刊のメディアです。出版社だからこその取材力と編集クオリティで、ニュースやインタビュー・コラムなどのテキスト記事に加え、ポッドキャストやYouTube、イベント、書籍出版など様々な情報発信をしています。また企業向けにWeb3に関するコンサルティングや、社内研修、コンテンツ制作サポートなども提供。さらに企業向けコミュニティ「Web3 Business Hub」の運営(Kudasaiと共同運営)しています。

これから「あたらしい経済」時代を迎える すべての個人 に、新時代をサバイバルするための武器を提供する、全くあたらしいWEBメディア・プロジェクトです。

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