ブロックチェーンは日本の国家戦略になるか〜デジタル庁発足人の平井卓也デジタル担当大臣へbitFlyerBlockchain加納裕三氏が表敬訪問

日本ブロックチェーン協会代表理事兼bitFlyer Blockchain代表取締役の加納裕三氏が本日10月1日に平井卓也デジタル担当大臣を表敬訪問した。その表敬訪問の一部の様子がメディアに公開された。

そこで加納氏は平井大臣へ「ブロックチェーンを国家戦略に。」というビジョンを元に「1.ブロックチェーン特区」、「2.CBDC試験導入」、「3.行政システムのブロックチェーン化」といった3つの提言を行った。本記事の前半ではプレス向けに公開された会談部分を、後半では会談後の加納氏への囲み取材についてお伝えする。

ブロックチェーンを国家戦略に。

加納氏が用意した提案資料をもとに会談がスタートした。

ブロックチェーンに関して平井大臣は「中央がなくなるというのは、これからの時代に非常に1つの考え方としてあるよね」と話し、中国が進めているデジタル人民元に関しては「そういう意味じゃあ、中国の(デジタル)人民元、これはちょっと違うな。要するに管理者がいるブロックチェーン。だから元々ブロックチェーンの考え方は中国共産党の考え方に合わないはずなんだよな。そうでしょう、本来は。それをうまくやろうとしている。新たな考え方だよね」と話した それに対して加納氏は「政治の機能的な部分は中央集権でやりたいんですけれども、システムのメリットをとりたい。それをハイブリッドにしているのが中国のデジタル人民元ですと答えた。

さらに平井氏の「日本は日本流のやり方を考えようっていうのが国家戦略かな」と言う発言に対し加納氏は「ブロックチェーンを国家戦略にして欲しいのですが、具体的に何かというと3つありまして、ブロックチェーンの特区を作って欲しい、スーパーシティーと絡めてもいいかもしれないですけど、特区を作って法的にも、サンドボックスとかで有名になろうとしている実験主体と絡めると良いです。イギリスだとレベル39というのがありますよね。同じようなことで、やはり1箇所に集まるのが重要だと考えています」と提案した。

また加納氏は「CBDC(中央銀行デジタル通貨)は日銀のデジタルマネーですけど、日銀が発行するのがダメなら、私は財務省のMOFコインという構想を考えたのですけど、500円玉をトークンにしたらどうですかというものです」と独自のCBDCの試験導入について提案した。加納氏のプランは1年など期限を区切って、期限を過ぎたら日本円に交換できることを保証した上で実際にCBDCを流通させてみるというものだった。

その試験導入をすることで「CBDCを流通させてみる。例えばブロックチェーン特区を指定して、その中でブロックチェーンを使ってみるとどのようにマネーが流通するのか、決済が変わるのか、金融機関がどういう風になるのか、マネタリーポリシー、金融政策はどう変わるのか」ということを検証することができると加納氏は続けた。

また加納氏は平井大臣に「行政システムのブロックチェーン化」についても提案した。

行政システムのブロックチェーン化について加納氏は「今、行政の縦割りシステムを直そうという話にはなっていると思うのですけど、ブロックチェーンの何がいいかっていうとくっつきやすいです」と表現し「秘密鍵と公開鍵の暗号を使っているので、例えばマイナンバーカードをブロックチェーンシステムにします。それを参照する形で、いろんな住民票システムをバラバラにブロックチェーンに置き換えたとしても、参照できるような形に作れると思うんです。行政システムを統合するときには非常に相性が良いです」と話した。

それに対して平井大臣は「何年か前に総務省が検討を始めていたよね?」と話し、ただそれがトーンダウンしていることを加納氏が伝えると平井大臣は「行政システムのブロックチェーン化は可能性としてあるんだよね。特に医療情報なんかは向いているよね」と話した。

公開された会談で最後に加納氏は「3つご要望を申し上げたのですが、一番最初の『ブロックチェーンを国家戦略に。』これが非常に重要で、アメリカも中国も国家戦略にすると言っているので、思い切ってもらいたい。日本も国家戦略にするとおっしゃっていただけると非常に盛り上がるのではないかと思っています」と話した。

マイナンバーカード普及にブロックチェーン技術が鍵となるか

その後二人の非公開の会談が約20分実施され、その会談後に加納氏はメディアの囲み取材に応じた。

記者からの「主に大臣が関心だったりを示されていたのはどのあたりでしょうか」との質問に、加納氏は「やはりブロックチェーンとマイナンバーだと思うのですけど、マイナンバーを普及させたいという話をいただいて、具体的な数値もおっしゃっていました。あのまずはやっぱりマイナンバーを最終的にはデジタル化したいというお話だと思いますので、発行枚数を増やしまして、普及させたいということを非常に強くおっしゃっていました」と話した。

また加納氏は「かなり早い段階でマイナンバーカードを普及させたいということは強くおっしゃっていましたので、非常に力を入れていく分野だと感じました」と加えた。

「あたらしい経済」は加納氏へマイナンバーカードのシステムをブロックチェーン技術で具体的にどのように提言するかに関して質問した。

加納氏は「これはあくまで私の提言ですので、大臣が言っているわけではないですけれども、私としてはマイナンバーカードのシステムは、ブロックチェーンを使うことが有用であると考えています。やはり英語表記であったり、西暦表記であったり、こういったところがですねマイナンバーで実現できると利便性が上がると思います。行政システムがですね、縦割りシステムになっているんですけど、それがブロックチェーンであれば容易につながるとお伝えしました」と答えた。

さらに「あたらしい経済」の「平井大臣はデジタル化というものをどのように捉えられていて、どのように国民にとって良いものとなるとお考えになっていると、加納さんは感じましたか」という質問に対し加納氏は「デジタル化は非常に重要な国家戦略だと思っているのだと思います。まあやっぱり手順を踏まなければいけないので、マイナンバーカードであるならば、カードを発行してその後にデジタル化をされるという手続きだと思っています。当然法改正とかいろんなものがあると思うんですけれども、デジタル化によって国が良くなると感じられているように思います」と熱く答えてくれた。

また加納氏は、記者から脱ハンコ政策に関する質問を受けて持論を語った。「ハンコをなくすというか、ハンコも使える、電子証明も使えるという選択肢がある状況が良いなと思っています」と答え、その上でいろんな法律をみると必ずしも法的にハンコが求められているわけではないと話し「民間の私契約であったり、行政手続きの印鑑であったりは、大部分が廃止できるのではないかと思っています。

そして次のステージとして電子署名が普及する、そうすることで「簡単に契約行為ができるようになると、民間及び行政の事務手続きが削減できるのではないかと考えています」と話した。

最後に

今回加納氏からはCBDCの地域限定・期間限定の導入提案があった。日銀がCBDC導入検討をする中でも議論されることを期待したい。また改正資金決済法、金融商品取引法、ブロックチェーン技術について曖昧な部分が多数見受けられるので、JBA理事として加納氏は対応していく予定とのことだ。

本日2020年10月1日はブロックチェーン領域の民間企業・団体が政府と良好な関係を築き、社会に必要不可欠なブロックチェーン技術の適用・推進に向けての大きな1日になるかもしれない。

(取材:竹田匡宏)

この記事の著者・インタビューイ

竹田匡宏

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

兵庫県西宮市出身、早稲田大学人間科学部卒業。
「あたらしい経済」の編集者・記者。

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