電子船荷証券とDCJPYを連携、書類移転と決済の同時処理へ
トークン化預金プラットフォームを提供するDCPとデジタル貿易プラットフォームを提供するスタンデージ(STANDAGE)が、商工中金の参加のもと、決済一体型の貿易プラットフォームの共同検討を開始した。各社が10月28日に発表した。2028年度の商用化を目指す。
今回の取り組みでは、電子船荷証券(eB/L)と、商工中金が発行するトークン化預金「DCJPY」を活用した決済機能を連携させる。貿易書類の権利移転と代金支払いを同時に行う「DvP(同時履行)決済」の実現に向け、制度・技術・実務面の課題整理と実証実験の準備を進める。
トークン化預金とは、銀行預金にブロックチェーンなどの技術を活用し、デジタル上で取り扱えるようにしたものだ。一般的な暗号資産(仮想通貨)とは異なる。
DCJPYは、銀行預金をブロックチェーンなどの技術によりデジタル上で機能拡張した円建てのトークン化預金だ。DCPは、銀行が発行するDCJPYと企業のシステムを接続するプラットフォームを構築している。DCJPYは銀行が発行・償還を担い、スマートコントラクトと組み合わせることで、あらかじめ設定した条件に応じた自動決済などに利用できる。
具体的には、スタンデージが採用するカーゴエックス(CargoX)のeB/Lプラットフォームと、DCPのトークン化預金プラットフォーム「DCP」を連携させる。スマートコントラクトによる自動処理を通じて、書類の権利移転と資金決済を連動させる構想だ。
従来の貿易実務では、紙の船荷証券などの授受や確認、代金決済に時間や事務負担がかかっている。書類の到着や代金回収までの時間差が、企業の資金繰りや貨物の引き取りに影響することも課題となっている。今回の取り組みでは、書類移転と資金決済の同時処理により、中小・中堅企業の資金繰り改善や業務効率化につなげることを目指す。
両社は、輸出企業の代金未回収リスクの低減や資金回収の早期化、書類の到着遅延による貨物引き取りの停滞に伴う追加費用の抑制を見込む。利用企業はオンラインで24時間申請でき、その後、銀行による所定の確認を経て、eB/Lの権利移転と決済を行う想定だ。
また商工中金は、中小・中堅企業が大規模なシステム投資や専門人材の確保を行わずに、貿易決済や貿易業務のデジタル化に取り組める環境の整備を目指すとしている。
今後、スタンデージは同決済機能を自社の貿易プラットフォーム「デジトラッドペイメント」に組み込む方針だ。またDCPは、将来的に国際決済網「パーティオール(Partior)」などとの連携も視野に入れ、海外送金の透明性や処理速度の向上を図るとしている。
なおスタンデージは、国内暗号資産(仮想通貨)交換業者のビットトレード(BitTrade)と、貿易領域における暗号資産活用の共同実証も実施していた。ビットトレードが9月10日に公表した結果によると、暗号資産の着金確認から売却・円転(日本円への換金)を経て、同社口座に日本円残高が反映されるまでの工程を数時間以内に完了したという。
同実証では、円転時のコストも事前の想定水準を下回ったと報告されている。ただし、具体的な金額や料率は公表されておらず、所要時間も設定した実証条件での結果であり、取引条件や運用方法によって異なるとされている。
DCJPYの既存の活用事例としては、2024年8月に商用利用が始まった環境価値の取引・決済がある。インターネットイニシアティブ(IIJ)が非化石証書に由来する環境価値をデジタルアセット化し、その対価をGMOあおぞらネット銀行が発行するDCJPYで決済する仕組みだ。
また今年3月には、ファーストアカウンティングやGMOあおぞらネット銀行など4社が、DCJPYを活用した請求書支払い自動化の実証実験を実施したと発表した。同実証では、国際標準規格「ペポル(Peppol)」に準拠した請求データとDCJPYを連携させ、支払いから入金確認・消込までの業務効率化を検証した。
さらに4月には、SBI証券や大和証券、SBI新生銀行など6社が、DCJPYを用いたセキュリティトークン(ST/デジタル証券)のDvP決済の実証完了を発表した。実証では、実際に発行したデジタル社債とSBI新生銀行発行のDCJPYを用い、STの二次流通における証券・資金決済の業務フローを確認した。