インドSEBIが「Demat 2.0」開始、社債をトークン化しCBDCで決済

インドSEBIがトークン化社債のパイロット開始

インド証券取引委員会(Securities and Exchange Board of India:SEBI)が、社債をトークン化するパイロットプロジェクト「デマット2.0(Demat 2.0)」の開始を9月10日に発表した。

同プロジェクトでは、インド準備銀行(Reserve Bank of India:RBI)のホールセール中央銀行デジタル通貨(CBDC)「デジタル・ルピー」と接続し、トークン化した社債と資金を同時に移転する決済などを検証するとのことだ。

「デマット(Demat)」は、証券を電子化して保有・管理する「デマテリアライゼーション(Dematerialisation)」に由来する呼称だ。デマット2.0では、この既存の電子証券の仕組みに分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)を導入し、社債の発行、保有、取引、決済に利用する。具体的には、発行体が社債そのものを分散型台帳でデジタルトークンとして直接発行する仕組みだ。既存の社債を裏付け資産として別のトークンを発行する仕組みではなく、トークン自体が社債となる。一方、利率や満期、格付け、担保などの条件や、発行体の返済義務、投資家の権利は従来の社債と変わらない。

トークン化社債の所有権記録は、インドの証券保管振替機関が所有する分散型台帳で管理される。証券保管振替機関は、株式や債券などの証券を電子的に記録・管理し、売買に伴う証券の移転などを担う市場インフラだ。デマット2.0の導入後も、こうした証券保管振替機関の役割は維持される。

資金決済では、デマット2.0のシステムがRBIの統一市場インターフェース(Unified Market Interface:UMI)を通じてデジタル・ルピーと接続する。今回利用するホールセールCBDCは、一般消費者の日常的な支払いではなく、主に金融機関などの間で行われる資金決済を対象とするCBDCだ。

この接続により、デマット2.0では、社債を買い手へ移転する処理と、デジタル・ルピーを売り手へ移転する処理を同時に実行する「アトミックDvP(Delivery versus Payment)」が可能になる。どちらか一方の処理に失敗した場合は両方の決済が成立しないため、証券を引き渡したにもかかわらず代金を受け取れないといった決済リスクを解消できる。さらに、社債の利払い日や償還条件などはスマートコントラクトに組み込まれる。これにより、利息や満期時の元本が、債券保有者のCBDCウォレットへデジタル・ルピーで自動送金される。

SEBIは、こうした仕組みによって社債の発行や決済にかかる時間も短縮できると説明している。発行体が入札後に資金を受け取るまでの期間は、従来の2~3日から入札当日に短縮できる。また今後予定される流通市場では、社債を売却した投資家も代金を即時に受け取れるようになるとのことだ。

なお、デマット2.0で利用する分散型台帳技術は、プライベートかつパーミッションド型となる。当初は証券保管振替機関と証券取引所がノードを運営する。ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)のように誰でも参加できるパブリックブロックチェーンとは異なり、認可された機関がネットワークを運営する仕組みだ。

一方、デマット2.0は既存の社債市場とは別に新たなトークン市場を構築するものではない。社債の発行や流通には既存の取引プラットフォームを利用し、それらを分散型台帳に接続する。つまり、既存の規制市場を維持しながら、証券の記録や決済に分散型台帳技術を導入する設計となる。

投資家は既存のデマット口座でトークン化社債を保有でき、新たなデマット口座の開設や追加の本人確認(KYC)は必要ない。ただしデマット2.0を有効化し、資金決済のために参加銀行のホールセールCBDCウォレットを保有する必要がある。

デマット2.0では、すでに3社がトークン化社債を発行している。RECリミテッド(REC Limited)は9月7日、18人の投資家から50億ルピー(約80.5億円)を調達した。L&Tリミテッド(L&T Limited)は9月9日、4人の投資家から50億ルピー(約80.5億円)を調達。IIFLは同日、1人の投資家から2億5,000万ルピー(約4.0億円)を調達した。3社の発行総額は102億5,000万ルピー(約165.0億円)となる。

今回のパイロットは段階的に進められる。SEBIの計画では、現在の第1段階でトークン化社債の発行を中心に検証する。第2段階では流通市場での取引や個人投資家による利用へ対象を拡大する。第3段階では、分散型台帳のノードを他の市場参加者へ拡大するほか、社債以外の金融商品への応用も検討する。

なおデマット2.0は、SEBIの規制サンドボックスの下で実施されるパイロットプロジェクトだ。SEBIは今回の実証でアーキテクチャや運用方法を検証し、その結果を今後のより広範な規制枠組みの検討に生かす方針だ。

参考:資料1資料2 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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