マントラチェーン、脆弱性悪用受け約30時間停止。修正版適用で復旧

マントラチェーンでインシデント、約30時間にわたりネットワーク停止

RWA(現実資産)のトークン化を主要用途とするレイヤー1ブロックチェーン「マントラチェーン(MANTRA Chain)」でセキュリティインシデントが発生し、ネットワークが一時停止した。マントラチェーン公式Xアカウントで日本時間8月21日に発表された。ネットワークは約30時間後にブロック生成を再開し、8月24日にはインシデントが「解決済み」となっている。

マントラチェーンは、不動産などの現実資産やそれに紐づく権利をブロックチェーン上で扱う「RWAのトークン化」を主要用途として開発されたネットワークだ。同チェーンの運営主体として「マントラチェーン・アソシエーション(MANTRA Chain Association)」が設立されている。

またマントラチェーンでは、不動産投資プラットフォームや米国債を裏付けとするステーブルコインなど、RWAに関連するサービスが実際に展開されている。

今回のインシデントを受け、マントラチェーンは予防措置としてネットワークを停止した。これによりブロックチェーンで新たな取引を処理できなくなり、トランザクションや送金、ステーキングなどが利用できない状態となった。マントラチェーンへの入出金にも影響が生じた。

発表当初、インシデントの原因や復旧時期は明らかになっていなかった。その後、マントラチェーン公式Xアカウントは、攻撃に利用された脆弱性を特定し、差し迫った脅威を封じ込めたと発表した。

公式ステータスページでは、インシデントの影響はマントラが管理する2つのウォレットに限定されたとのこと。ユーザー資金は悪用されておらず、暗号資産取引所やパートナーの資金が影響を受けた兆候も確認されなかった。

その後、脆弱性に対応する修正版「v8.4.0」が用意された。本番環境への適用に向けた事前テストを経て、ネットワーク運営に参加するバリデータと連携して再起動が実施された。

マントラチェーンは8月22日5時30分(UTC)ごろにブロック生成を再開した。ネットワーク停止から再開までは約30時間となる。

復旧にあたって、攻撃前の状態までブロックチェーンの記録を巻き戻す「ロールバック」は実施されなかった。また停止中の状態変更やユーザー残高の変更もなかったとのことだ。

その後もネットワークの監視が続けられ、公式ステータスページでは8月24日に今回のインシデントが「解決済み」とされた。現在はマントラチェーンのメインネットが正常に稼働している。今後、今回のインシデントに関するポストモーテム(事後検証)も公開されるとのことだ。

なおマントラチェーンのネイティブトークン「MANTRA」の価格も下落している。コインゲッコー(CoinGecko)によると、8月24日16時30分の記事執筆時点でMANTRAは0.004272ドルで取引されており、過去7日間で12.1%下落している。

コスモスEVMモジュールの脆弱性を悪用、v8.4.0で修正

今回の攻撃では、マントラチェーンでイーサリアム(Ethereum)との互換機能を提供する「コスモスEVM(Cosmos EVM)モジュール」の脆弱性が悪用された。

コスモスEVMモジュールは、簡単にいうとマントラチェーンでイーサリアムと互換性のあるスマートコントラクトを利用できるようにするためのソフトウェアだ。

具体的には、マントラチェーンはブロックチェーンを構築するための開発基盤「コスモスSDK(Cosmos SDK)」を利用している。一方、EVM(Ethereum Virtual Machine)は、イーサリアムのスマートコントラクトを実行するための仕組みだ。

コスモスEVMモジュールを組み込むことで、コスモスSDKを基盤とするマントラチェーンでもEVM互換のスマートコントラクトを実行できる。

つまり今回のインシデントでは、マントラチェーンにイーサリアムとの互換機能を提供するために組み込まれたソフトウェアの脆弱性が、攻撃者に悪用されたことになる。

公式ステータスページではインシデント発生後、攻撃者がマントラチェーンで利用する「上流の依存コンポーネント(upstream dependency)」の脆弱性を悪用したと説明された。その後の調査で、問題がコスモスEVMモジュールの脆弱性であることが特定された。

この脆弱性に対応したソフトウェア更新版「v8.4.0」には、脆弱性の修正に加えて追加のセキュリティ強化も含まれている。

v8.4.0は本番環境への適用前に、メインネットの状態を再現した内部環境で繰り返し検証された。その後、バリデータと連携して同バージョンが適用され、ネットワークのブロック生成が再開された。

なお公式ステータスページでは、今回のインシデントについて根本原因の分析を完了したと説明された。一方、攻撃者がコスモスEVMモジュールの脆弱性を具体的にどのような手順で悪用したかは、現時点で公表されていない。今後、今回のインシデントに関するポストモーテムが公開される予定だ。

参考:コインゲッコーステータスページ
像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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