マヤチェーンで約170万ドル流出、ネットワーク停止。複数の不具合が連鎖

約170万ドル相当取得、マヤチェーンを停止

マヤ・プロトコル(Maya Protocol)を構成するクロスチェーンAMM「マヤチェーン(MAYAChain)」で、エクスプロイトが発生した。マヤ・プロトコル共同創設者のアルックス(Aaluxx)氏が8月19日に自身のXアカウントで報告した。ブロックチェーンセキュリティ企業サーティック(CertiK)は、被害額を約170万ドル(約2.7億円)と推定している。

アルックス氏は初動報告で、攻撃者が約20BTCとその他の資産を取得したと説明した。約20BTCは当時約140万ドル(約2.2億円)相当で、その他の資産は約30万ドル(約4,800万円)相当だったとのこと。また同氏は、被害拡大を防ぐためマヤチェーン上のスワップなどの取引を停止したと説明している。

マヤ・プロトコルは、マヤチェーンや開発中の「アズテック・チェーン(AZTECChain)」などで構成されるエコシステムだ。このうちマヤチェーンは、異なるブロックチェーン上のネイティブ資産を交換できるクロスチェーンAMMで、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などを中央集権型取引所やラップドトークンを介さずに交換できる仕組みを提供している。

マヤチェーンでは、ネイティブトークン「CACAO」とBTCやETHなどの対応資産を組み合わせた流動性プールを利用して資産交換を行う。例えばBTCとETHを交換する場合、CACAOを仲介資産として「BTC→CACAO→ETH」と交換する仕組みだ。このため、BTC / CACAOやETH / CACAOなどの流動性プールには、利用者が交換するBTCやETHなどの資産とCACAOが預けられている。

マヤチェーンのオンチェーンデータとソースコードを分析した外部レポートでは、今回の攻撃について、アービトラム(Arbitrum)上のLINKとCACAOで構成されるLINK / CACAOプールの処理に関する複数の不具合が悪用されたと分析している。

外部分析では、攻撃者が取得した資産のうち20.83BTCなど約136万ドル(約2.2億円)相当が、ビットコインやアービトラムなどの外部ブロックチェーン上の攻撃者アドレスへ移されたと推定されている。また、攻撃者のマヤチェーン上のアドレスには約887万CACAOなどが残ったとされている。

今回の攻撃に伴い、CACAOには大きな売り圧力が生じた。外部分析では、CACAO価格が攻撃前の約0.115ドルから一時約0.013ドルまで下落し、下落率は約89%に達したとされている。この価格下落による市場価値の減少は、攻撃者が取得した資産の被害額とは別の影響となる。

CACAO価格の急落に伴い、マヤチェーンの流動性プールと外部市場との価格差を利用した第三者によるアービトラージ(裁定取引)も発生した。アービトラージは、市場間の価格差を利用して利益を得る取引だ。外部分析では、こうした第三者の取引によってもBTCやETHなどが流動性プールから移動したとされている。ただし、これらは攻撃者による直接的な資産取得とは区別されている。

マヤ・プロトコル側は攻撃後、原因の調査と修正を進めている。アルックス氏は攻撃者に対し、脆弱性の詳細を開示して資金を返還した場合、ホワイトハットとしてバグバウンティを提供する意向を示した。バグバウンティは、脆弱性の報告などに対して報奨金を支払う制度だ。

また同氏は、流出した資金を回収できなかった場合についても、影響を受けた流動性プールの資産を回復させる方針を示している。マヤチームが開発を進めるアズテック・チェーンへの投資を募り、調達資金の一部を今回のエクスプロイトからの回復に向けてマヤ・プロトコルの流動性プールへ充てる構想にも言及した。

複数の不具合連鎖、プール残高を異常に増加

マヤチェーンのオンチェーンデータとソースコードを分析した外部レポートは、今回の攻撃について、取引記録や出金処理、流動性プールの計算などに関する複数の不具合が連鎖的に悪用されたと分析している。

攻撃者はこれらの不具合を利用し、実際には正常に処理されたアービトラム上のLINKの出金を、マヤチェーンに「盗難」と誤って判定させたとのことだ。これにより盗難発生時の補填処理が実行され、LINK / CACAOプールには約4,945万CACAOが追加された状態として記録された。

しかし、補填に必要なCACAOを実際に移動する処理は、リザーブの残高不足によって失敗した。一方、LINK / CACAOプールに記録されたCACAO残高は元に戻らなかった。このため、実際にはCACAOが移動していないにもかかわらず、マヤチェーン内部では同プールに大量のCACAOが存在する状態となったとのことだ。

攻撃者はその後、この異常なプール残高を利用して約4,887万CACAOを取得した。さらに取得したCACAOをBTC / CACAOなど別の流動性プールでBTCなどへ交換し、その一部を外部ブロックチェーンへ移したとのことだ。

なおアルックス氏は今回悪用された不具合について、セキュリティ企業ハルボーン(Halborn)による監査や、AIモデル「Claude Fable 5」を用いた監査でも発見されず、3〜4年間見つかっていなかったと説明した。ただし、各監査が今回問題となったすべてのコードや処理を監査対象としていたかは明らかになっていない。

参考:外部レポート1外部レポート2 
画像:PIXTA

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この記事の著者・インタビューイ

渡邉洋輔

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

「あたらしい経済」編集部 記者
ブロックチェーンおよびデジタル資産分野を専門とし情報発信を行っている。オンチェーンデータや流動性構造など、市場設計の観点からのリサーチにも取り組んでいる。

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