ヴィタリックがガス代先物市場の創設を提案
イーサリアム(Ethereum)の共同創業者であるヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin)氏が、将来のトランザクション手数料に対してヘッジを可能にする、トラストレスなオンチェーンガス先物市場の創設を12月6日(現地時間)に自身のX投稿で提案した。
同氏はXへの投稿で、「現在の手数料は低いが、2年後はどうなるか」といった質問をユーザーからよく受けると述べた。イーサリアムでは、トランザクションの送信やスマートコントラクトの使用など、ネットワーク上で何かを実行する際にユーザーが支払う手数料を「ガス代」と呼ぶ。ガス代はネットワークが混雑すると上昇し、空いていると下がる仕組みだ。
ブテリン氏は、提案するガス先物市場は実質的に「ベースフィー(basefee)の予測市場」であり、将来のガス代に対する市場参加者の期待を示す明確なシグナルを提供しうると主張した。また参加者が特定の時間帯に利用する一定量のガスをあらかじめ購入できるようになるという。これにより、将来のガス価格に対してヘッジしつつ、「特定の時間間隔で特定量のガスを事実上前払いする」ことが可能になると同氏は説明している。
しかし、この提案には複数の専門家から懸念の声も上がった。フラッシュボッツ(Flashbots)の戦略スチュワードであるハス(Hasu)氏は、「この市場には自然なショート側が存在しない」と指摘した。同氏は、多くのユーザーがガス価格上昇リスクにさらされておりヘッジしたい一方で、「ガスをロングしている自然な参加者はほとんどおらず、多少のノイズトレードはあっても、意味のある規模の市場を形成するには関心が足りないだろう」と述べている。
これに対しブテリン氏は、「プロトコル自体がショート側になるべきか」と問いかけ、ブロックあたり100万ガス分のベースフィー請求権をオンチェーンオークションで販売するといった枠組みを一案として示唆した。ただしハス氏は、そのような構造であっても、自然なショート側の不在という中核的な問題は解決しない可能性があると反論している。
またノーシス(Gnosis)の共同創設者であるマーティン・コッペルマン(Martin Koppelmann)氏も、イーサリアムのバーン(焼却)メカニズムがこの構想を複雑にすると主張した。同氏は「バーンがなければ、すべてのバリデーターがそのようなヘッジの自然な売り手になり得る。しかしバーンがあると、自ら重大なリスクを負う必要がある売り手しか現れず、その分コストが高くつく」と述べている。
なお今回の提案は、イーサリアムのコスト構造やスケーリングロードマップ、トランザクションスループットに関する開発が活発化しているタイミングで行われた。ネットワークでは12月3日に「フサカ(Fusaka)」アップグレードが実施され、年2回のハードフォークスケジュールへの移行が始まった。さらに直近のアップデートでは、L1のブロックガスリミットが約6,000万ガスまで引き上げられ、ここ数年で最高水準の処理能力を実現しているとされる。
We need a good trustless onchain gas futures market.
— vitalik.eth (@VitalikButerin) December 6, 2025
(Like, a prediction market on the BASEFEE)
I’ve heard people ask: “today fees are low, but what about in 2 years? You say they’ll stay low because of increasing gaslimit from BAL + ePBS + later ZK-EVM, but do I believe you?”…
画像:StudioM1